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Jay Nelson ジェイ・ネルソン/アーティスト|PAPERSKY Interview

, 2015/06/16

サンフランシスコ在住のジェイ・ネルソンは世界的にその名を知られる、異色のアーティストだ。代表的な作品は、木材とマシンを融合させた車や自転車、ボート、ツリーハウスなどなど。彼の作品は確かな機能性と、想像を膨らませるアート性に富み、一目で見る者の記憶に深く刻まれるものばかり。そんなジェイの自宅を訪ね、アイデアの源泉、創作のプロセス、ベイエリアに対する想いなどについて、訊いていく。
 
―まずは、どのくらいのペースで作品をつくっているか、また現在、どのような種類のプロジェクトを手がけているか、教えてください。

ペースを設定しているわけではないけど、だいたい、年に4つか5つのビッグプロジェクトを手がけて、その間に友人から頼まれた大小のものづくりを進めているよ。ビッグプロジェクトというのは、クライアントからの依頼でサイズ的に大きなものをつくるとかね。

たとえば今、進めているプロジェクトで大がかりなものは、パタゴニアからの依頼でつくっているプレイハウスかな。内部がアートミュージアムのようになっていて、人が入れるようになっている作品なんだ。Facebookからの依頼でつくっているインスタレーションなんかも今年の大きなテーマだね。あとは友人からの依頼でハワイのカウアイ島に小さな家をつくっている。同時にペインティングとかワークチェアとかランプとか、小さいサイズの作品も手がけているんだ。
 
―この家には庭にアトリエがありますが、ここで大きなサイズのものはつくれませんよね。家や車、大きなアートピースはどこでどのようにつくっているのでしょう。

たとえばカウアイ島の家づくりはもちろん年に数回、現地に足を運んで少しずつ進める。1回行くと数週間ステイして一段落つくとまた帰ってという繰り返しだね。車やインスタレーションにしてもそんなサイクルだから、いつもさまざまな場所へ出張している感じかな。だから作品づくりと旅がセットになっていることも多い。その土地からもらうインスピレーションだって少なくないから、いろいろな場所でものづくりをするというのはメリットもあるね。
 
―あなたの作品のなかでもとりわけ、キャンピングカーはユニークですね。こうしたアイデアはどのように生まれるのでしょうか。初めてつくった大きなサイズの作品も車でありながら中で生活できるものでしたよね。

どの作品も、深く考え抜いて悩むということはあまりないね。僕にとっていいアイデアを生むコツはリラックスすることかな。だから寝る前の落ち着いた瞬間だったり、朝、ゆっくりコーヒーを飲んでいるときだったりにふと考えが思い浮かぶ。それと、僕にとってサーフィンは欠かせないものだから、海に出た後は気持ちが落ち着いて、自然にアイデアが浮かぶっていうことも多い。僕がつくっているのはアートといっても鑑賞するためのものではなく、ソーシャルなものだ。だから僕自身が生活をていねいに、毎日楽しく過ごすことが大切だと思っているよ。

初めてつくったキャンピングカーはホンダシビックを改造したものだった。でもあれは偶然に近いかたちで生まれたものだったんだ。友だちのお母さんから古い車を200ドルで買ってね。でも後部に大きな穴があいてて、そのままじゃ使えない状態だった。だから木材をシェル状にして、ベッドも設置すれば中で生活できるだろうと。そう考えてつくったらいろいろな人が話題にしてくれて。あれからツリーハウスをたくさんつくるようになったんだ。
 
―なぜ木材を利用するアイデアを思いついたのでしょう。木材を利用するメリットは何かありますか?

成形や仕上がりがおもしろいのはもちろんだけど、サンフランシスコは木材の調達に最適な場所だっていうことも理由のひとつ。ここにはもともとレッドウッド(セコイアの樹)の森がたくさんあってね。大勢の移住者がこれを利用して家を建てたんだけど、大地震によって多くの家屋が倒壊してしまった。その廃材として大量の木材が残されたので、材料の調達にはうってつけなんだ。そのなかから良質な木材を選んで入手するのは簡単じゃないけど、ハンティングみたいでおもしろいよ。

それに、木材には歴史が染み込んでいるからね。大昔は森に立っていたわけだし、家の建材に使われたってことはプレスされたり、ペイントされたり、いろいろな歴史をたどっているんだ。それぞれがユニークなストーリーをもっているという意味で、木を使うのはいいアイデアだと思っているよ。古い家具から「ワビサビ」を感じるのと同じかもしれないね(笑)。
 
―あなたのつくるキャンピングカーはファンタジックでもあり、実際に動かして生活することもできます。デザイン性と機能性はどのようなバランスが最適だと考えていますか。

どちらも同じくらい大切だと思っているけど、強いて言うならフォルムのデザイン性が51%、機能性が49%(笑)。このバランスがベストだね。
 
―小さいときはどのような少年だったのでしょう。また、作品づくりにおいて影響を受けた人はいますか。

いつも何かをつくっていたと思う。母が高校で陶芸の教師をしていたのも少なからず影響したね。だから自然な流れで高校を卒業してからアートスクールへ通うようになった。学校ではペインターとしてやっていこうと思って創作していたんだけど、同時に、こういう車があったらいいなとか、こういう家があればおもしろいということはたしかに考えていたね。今につながるような創作のスタートは学生時代に車をペイントしようとしたときかな。住む場所に困っていたのもあって、その車に住めればいいとも思っていた。
 
―サンフランシスコという街に住んで創作することをどう感じていますか。街から受け取るのは、どのようなインスピレーションなのでしょう。

アートスクールを卒業したてのころはお金がないから、安いエリアを探して友だちと部屋をシェアしていた。その時代はまだオーシャンビーチ周辺もサーファーの街という感じでね。でも世界的なIT企業がベイエリアに集中するようになって、どんどん人が多くなり、雰囲気も変わった。昔ののんびりしたムードも最高だったけど、そういう変化もおもしろいし、クリエイティブなアーティストとかも増えてきたから刺激もあるよ。
 そう、変化を受け入れるっていうのがサンフランシスコのいちばんの魅力かな。もともとヨーロッパから移住者が入ってきたことに始まって、東海岸からも人が流れてくるようになった。ヒッピー、ゲイ、ビート、ボートピープルまで、この土地はつねに異なる人種やカルチャーをのみ込みながら変貌してきた。ここに住む人間と接していると、そういう歴史の積み重ねを今でも感じることが多いね。僕も歴史の一部になれたらいいし、この街に何かを還元できれば嬉しいと思う。
変化という意味ではここ数年、IT関連のテックピープルが街の勢いとかトレンドをつくり出しているのも特徴的だ。IT業界のクリエイティビティは街の風景や雰囲気も急速に変えつつある。人が増え過ぎたことによる家賃の高騰は住人にとって大きな問題になってしまっているけど、多様な人間が集まるという意味ではこんなにおもしろい場所はないとも思う。
 たくさんの人間が集まればこれまでと異なる何かが必ず起きる。つまり新しい経験ができるっていうことでもあって、それは僕にとってプラスに働くと思っているよ。今のサンフランシスコは歴史的な趣きと近代的なエッセンスがすごい勢いで混ざり合っている途中、という感じかな。
 
―サンフランシスコ特有の、自然豊かで落ち着きのある雰囲気が失われていっていると感じますか。

そこまでは感じない。それに僕はとにかくサーフィンが好きで自然も愛しているけど、人間が集まる都会も同じように好きだ。都会というよりクリエイティビティだね。だからサンフランシスコだけじゃなく、LAもニューヨークも魅力的な場所だと思っているよ。
 
―今後、どのような創作活動を続けていきたいと考えていますか。またどのようなライフスタイルを実践していきたいか、聞かせてください。

今はとにかくつくるものが多くて忙しいけど、すべてを楽しみながら進めていければそれでいい。アイデアはたくさんあるのに忙しくてすべてに手をつけられないのはちょっとしたストレスだけどね。楽しむというのは、どういう形ができてくるかを純粋におもしろがる、ということ。まずは誰も知らない、わからないことに挑戦して、具体的にアイデアを詰めていき、つくっているプロセスそのものを楽しみたい。

手をつけた瞬間には自分でもどういう最終型になるかわからないんだけど、手を動かしていくうちに完成の形が見えてくる。もちろん迷うポイントもたくさんあるし、簡単なプロセスでもない。でもそういうことすべてを楽しんで進めていきたい。具体的につくりたい作品の方向性とか、サイズ感にはこだわっていないね。

時間のかかる大きな作品もつくっているけどフォーカスしているのはスケールじゃなく、自分のつくったものがそれを見た人にどんな影響を与えるかということ。車やツリーハウス、小さいランプやドローイングでも、見たり触ったりした人がおもしろがってくれたり、便利に使ってくれれば僕は満足できる。ライフスタイルとしては創作の基地をいくつもつくって、そこで毎日、サーフィンできればOKだよ(笑)。
 
ジェイ・ネルソン Jay Nelson
1980年、ロサンゼルス生まれ。カリフォルニア・カレッジ・オブ・アートで創作を学び、アーティストとしてデビュー。木材とマシンを融合させた作品は、キャンピングカーをはじめ、自転車、ボートなど多数。その他、ツリーハウスやストゥーディオなど、ユニークな居住空間とファンタジックなデザイン性を両立させた創作で世界的に高い評価を得ている。 www.jaynelsonart.com

» PAPERSKY #47 San Francisco | Good Company Issue

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