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  • Photography: Patrick Tsai
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ニッポンの魅力再発見の旅 香川県小豆島

, 2015/05/26

豊かな人と心、食の魅力にあふれる小豆島。温暖な瀬戸内の気候、風光明媚な海と空と山の景色は、ここを訪れる人だけが得られる何よりのご褒美になる。さぁ、潮風に乗って、ツール・ド・ニッポン、小豆島へ船出です。熱情と慈愛に満ちた島の人とのふれあい、すばらしき出会いの島時間へ。

高松から1時間、神戸からもわずか3時間、潮風に乗って船旅に出かける。町の当たり前の景観となっているのは、オリーブ。その上品なたたずまい、銀色を帯びた“オリーブグリーン”がやさしく愛らしい。ここは、日本のオリーブ栽培発祥の場所として、また醤油の島としても知られる瀬戸内海の小豆島だ。

島の一日は、忙しい。小豆島食品・久留島さんの佃煮。その味の決め手になるのは、ヤマロク醤油の山本さんがつくる醤油。蒲さんがつくり出す塩は、島の自然環境と心が育む結晶。真砂一家がつくり出す素麺は、まっすぐでよどみなく白い。高尾農園の高尾さんこだわりのオリーブオイルを、島のリストランテ フリュウの渋谷さんが料理に活かす。HOMEMAKERSの三村夫妻は、周囲の人との交流に学び、できるかぎりなんでもを自分たちでつくって暮らす。この島は、つくる人の顔が見える、人の手と想いが紡ぐ“おいしい”にあふれている。

朝、ほくほくの白いごはんを手に、醤の町の路地をゆく。電話で予約して向かう遅めの島モーニングは、10時半頃が狙いめ。直径1mほどの平鍋からモクモクと上がるあたたかな湯気だけで、お椀一杯を完食できそう。88歳で現役の久留島周平さんと、58歳の克彦さん父子が、阿吽の呼吸で毎朝、直火で約3時間、混ぜ続けて炊き上げる佃煮は、この、できたてが絶品!「おいしい食材で炊くのがいちばん」と、利尻昆布、九州枕崎の鰹節でとった出汁に、島の醤油蔵を自身で確かめて選んだヤマロク醤油の鶴醤、喜界島の粗糖を用いる。讃岐親鳥の鶏そぼろ、しいたけ煮、きくらげ、角切昆布……「無添加・手づくり、旨味の凝縮した佃煮に誇りと自信をもって、できるかぎりつくり続けたいですね」。自ずと話し方にも力がこもり、そしてとても嬉しそうな久留島さん親子。忘れられない味とは、こういうものをいうのかもしれない。

再仕込み醤油・鶴醤は、通常、1年ほどで完成する天然本醸造の醤油を2年かけて仕込んだものを、再び、同じ材料と歳月をかけてつくる。約4年かけて完成する醤油のまろやかさとコクに虜となり、食卓に欠かせなくなる。「醤油をつくっているのは僕らではなく菌だから」と話すのは、ヤマロク醤油五代目の山本康夫さん。案内されたもろみ蔵には、高さ2mほどの杉樽が60樽も置かれ、150年かけて育った菌が覆う。「醤油は、小豆と小麦、塩と水、そして菌でつくられます。土壁や柱にも潜む菌、それらが育つための蔵と樽がある。厳しい状況でも先代がかたくなに守り受け継いできたこれらを、未来へつなぐことが僕の仕事なんです」。その想いは、61樽目の真新しい樽に表れていた。「仕込み樽をつくれる職人が全国に数人しかおらず、約50年後には、今使っている戦前の木桶もすべて使えなくなる。このままだと醤油づくりが続けられないですからね」と、さらに遠い200年後を見据え、自ら桶屋まで担う覚悟を決めた。ロマンと使命を背負った山本さんの、男の生き様に胸が熱くなる。

一度は途絶えた島の塩業を復活させ、いのちを吹き込む情熱の男との出会いもあった。波間に塩の花が咲く、そんな屋号を掲げた塩屋 波花堂の蒲敏樹さんは、岐阜から農業を志して島へ移住。ところが、目の前に青く広く続く海を見て「中学時代、夏休みの研究で塩に魅せられたことを思い出したんです」。蘇った思いに従うように、島の天然塩の再生という冒険に乗り出した。流下式の塩田装置をつくり、採れたかん水を塩小屋へ運び、薪で夜を徹して釡炊き。8畳間ほどの塩小屋でかきまわす、ろ過する、不純物を取り除く…… 煙に燻されながら、途方もない作業へ静かに向かうひたむきな姿を見た。

早朝3時に始まる手延べ素麺づくり。真砂喜之助製麺所の真砂淳さん夫妻とご両親の、一家総出の朝は早い。小麦粉と食塩水、ごま油を加えて混ぜて練って、どんどん細く延ばして天日干し、そして断裁。父の博明さんと、熱血野球人だという息子の淳さんが、交互に繰り広げる一連の作業は、リズミカルで舞台を観賞しているよう。「都会でアパレルの仕事なんかもしましたが、幼い頃から父や祖父の姿を見てきましたからね」と軽やかに話す敦さんは、工場見学も積極的に受け入れる。素麺を求めて、いや、愛すべき真砂家の人に会いに寄りたい製麺所なのだ。

島へは、自転車で走りにくる人も多いという。島の輪郭に沿って一周すると約100km。風に乗って太陽をいっぱいに浴びて走る。他では得られない感動の体験になるだろう。しかしその爽快感もさることながら、島の人に会いに〈立ち止まること〉にこそ、この島の醍醐味があると確信している。オリーブ農家の高尾さんが育てるアスパラを狙って、醤油の発酵の音を求めて、初夏にもまた島を訪れようかと胃袋がささやく。
 
PAPERSKY ツール・ド・ニッポン in 小豆島(2015.5.30-31開催)
http://www.papersky.jp/2015/04/15/tour-de-nippon-in-shodoshima/

PAPERSKY Tour de Nippon in 小豆島 Movie
https://youtu.be/TMOigDCA8zg

» PAPERSKY #47 San Francisco Good Company

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小豆島
place
香川

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