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  • Illustration: Yohei Naruse
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クライミングの聖地、コロラドを描く

, 2014/10/23

デンバーから北西へおよそ1時間。山あいの小さな町、ボウルダーはアメリカのアウトドア文化を発信しつづける町として知られている。町からわずか数分のところにハイキングやクライミングを楽しめるフィールドが広がる。大型登山用品店の他、中心地には人気アウトドアブランドの直営店が連なり、クライミングジムは3軒もある。多くのトップクライマーが住んでいることでも知られ、郊外には無数のクライミングエリアが点在する。近年では世界的ボルダリングエリアとして注目を集めている。

そんなボウルダーを自分の目で見てみたいと思うと同時に、訪れたからにはぜひとも登りたい岩壁があった。町のすぐ背後にそびえ、町のどこからでも見渡せる、町の象徴とでもいうべき「Flatiron(フラットアイアン)」である。名前の通り平らなスラブ状の岩壁(垂直以下の壁)が屏風のように連なっている。

もっとも町に近い「First Flatiron」に「Direct East Face(5.6R)」というルートがある。いちばん大きな壁のまんなかを直登する美しいライン。「R」というのは「Runout(ランナウト)」を意味し、支点間の距離が遠い、支点が取りにくいということ。堕ちたら大事故になる危険性が高い。ルートスケール300mほどのマルチピッチルートだ。このルートが初めて登られたのは1960年。フリークライミングが台頭しはじめたころに築かれたクラシックルートである。

宿からわずか5分足らず。町のはずれというより住宅地の続きのような場所に駐車場はあった。草原の向こうに赤茶けた岩壁がそびえている。気持ちのよいハイキングコースを20分ほど歩いて岩壁の基部へ。すでに数パーティーが登りはじめていた。

1ピッチめ。ところどころにボルトが見えるが、なるほど、その間隔はかなり遠い。足を滑らせたら軽く20mは堕ちるから、ロープをつけていてもそれほど意味はない。先行パーティーはボルトとは別のラインから登っていく。クラック(岩の割目)は多くなく、カム(割目に自分でセットする支点の一種)が使える場所も限られている。自分の責任で登れるところから登ればよい、ということらしい。

登るのは易しいが、岩が欠けやしないかと緊張しながら高度を稼ぐ。すると、すぐ下からアメリカ人の別パーティーが登ってきた。男性がリードし、初心者らしきふたりの女性が後からついてくる。この男性、30m近くあるこのピッチだが一度も中間支点を取っていない。ふと横を見ると、リーバイスのジーンズの裾をまくり上げた男性がひとり、小さなデイパックを背負って壁に張りついている。足にはクライミングシューズ。が、ロープをつけていない。

2ピッチめ以降、このルートには懸垂下降用のボルト以外、一本のボルトもなかった。ピッチの明確な区切りもなく、クラックや岩角、立ち木など自分で考えて支点をつくった。人気ルートである。日本にこのルートがあったなら多くのボルトが打たれているだろう。安全をお膳立てするのではなく、あえてリスクを残す。リスクと向き合い、受け入れ、各自が判断して岩を登る……それはクライミングのもっとも根本的なことなのだが、フリークライミングがフィットネススポーツとして親しまれるようになった今日にあって、このような冒険的な部分が大切に残されていることに大きく頷かされた。それこそがこのルートの魅力なのだろう。フリーソロを咎める者はおらず、あたかもごく当たり前のように受け入れられている雰囲気さえあった。人々は自分に合ったスタイルで自由に登っているのである。ルートもクライマーも、タフでワイルドである。

このタフさこそが、アメリカのクライミング文化の根底に流れるものなのだろうか。フラットアイアンを登って、そう思わずにはいられなかった。
 
» PAPERSKY #45 Colorado | Bouldering & Hot Springs Issue (no.45)

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