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近所づきあいに欠かせない場所|月のとうふ|神崎 自然食 (2)

神崎町では、家々が畑の海に浮かぶ島のようにぽつりぽつりと点在している。そんな郊外にあるような、大型スーパーに行ったとしよう。冷蔵ケースには豆腐がぎっしり並べられ、きれいにパッケージされたあらゆる種類の豆腐は、ポケットに2 […]

10/22/2014

神崎町では、家々が畑の海に浮かぶ島のようにぽつりぽつりと点在している。そんな郊外にあるような、大型スーパーに行ったとしよう。冷蔵ケースには豆腐がぎっしり並べられ、きれいにパッケージされたあらゆる種類の豆腐は、ポケットに200円ほどあれば購入できる。だが、スーパーで買った豆腐にはいったい何が入っているのか考えてみたことはあるだろうか?
「おもに、この地で生産した大豆を原料に使っています」。ここは周浦宏幸の豆腐屋『月のとうふ』の前。豆腐を製造販売する小さな店舗兼工場である。「価格はそれほど安くありませんが、地元の農家さんから大豆を仕入れています。ただ、神崎町で在来種の大豆を生産しているのはその方だけなので、彼がもしいなくなったら他の方法を考えないといけないでしょうね」 この農家こそ、鈴木一司。この地で自然農法を実践している唯一無二の生産者だ。しかし、大豆生産者である鈴木と、豆腐を製造する周浦との間には単なる取引相手に留まらない深い絆がある。
彼は以前、不動産関係のサラリーマンをしていたが、8年前に病気になった。「そのとき、病気になった原因は自分のライフスタイルと食生活にあるのではないかと考えました。それから食品がどのように生産されているかに関心をもつようになり、生産者さんたちに会いにいくようになったのです」。その後、周浦はサラリーマンを辞め、東京のある豆腐屋で働き始めた。その豆腐屋は原料の大豆を鈴木の農園から仕入れていた。「食生活を変えてから1年経つと、心も身体もぐんと健康になりました。そんなある日、鈴木さんが『神崎町に来て、豆腐屋をやれよ』と誘ってくれて、2009年にお店を開いたわけです」。
そして今日も、周浦は豆腐を売りきった。ほんの数キロメートル先で生産されている大豆を使った豆腐は、他では買えない特別なものである。現在日本で販売されている豆腐の大半は外国産大豆を原料に使っている。これらの豆腐は数千キロも離れた場所や、地球の裏側で生産された大豆を使い、国産大豆の豆腐とはくらべものにならない金額で販売されている。
「新しい生活で最も難しかったことは?」と訊いてみると、次の答えが返ってきた。「田舎では近所づきあいをして、よい人間関係を築くことが不可欠です。私にはそういう経験がなく、まったく知らない世界だったので、とても苦労しましたね。当初はそのような人間関係を築くことが大切だと知らなかったんです」。そのとき、寺田と鈴木が偶然やってきて、3人が勢ぞろいした。彼らは、首都圏の端っこの小さな町に暮らしながら、よい食べ物のつくり方を日々研究している仲間である。
月のとうふ
千葉県香取郡神崎町神崎本宿2055
TEL: 0478-70-1028
tsukinotofu.com