美しいスキーリゾート、アスペン。多様な山の恵みを求めて

1848年、カリフォルニアで砂金が見つかったのを発端に、アメリカ中西部には金脈を求めて人々が殺到した。50年代に入るとロッキー山脈の麓でも金や銀、その他の鉱物が続々と発見され、コロラドの人口も爆発的に増加する。知ってのとおり、金や銀は宇宙で生成され、これが地表に舞い降り、長い年月を経て鉱脈となる。いわばゴールドラッシュは、天からの贈り物がロッキーの山肌を覆い、そこに人間が群がる現象なのだ。だが鉱脈が尽きると人影は一挙にまばらとなり、多くの土地がゴーストタウンに。こうした歴史をもつ土地がコロラドにはいくつかある。僕らが次に目指した州西部のアスペンも、一時は銀鉱脈によって栄え、それが尽きると人口1,000人をきる寂しい街になった。ところが1930年代に入るとある開発者が良質な雪質に着目。そこから街は再生し、今では世界的スキーリゾートとしてその名を知られる。つまり人々は、ロッキーに舞い降りる金や銀、そして雪という恵みに一喜一憂し、集散を重ねてきたのだ。そんなことを考えながらまだ雪の残るアスペンの街を歩き終え、少し冷えた体を温めるため温泉へと向かうことにした。
標高3,413mの場所にあるコナンドラム温泉はまさに、ロッキーの秘湯。ここに到達するまで13km以上も山をハイクしなければならず、なかなかの道程。でも、ちょっと苦労して来ただけのことはあった。さすがに全米一、標高の高い場所にある温泉だ。氷河で形成されたマルーン・ベル、スノーマスというふたつの山の原生林が、小さな温泉から存分に見てとれる。そういえば、山がもたらす恵みには「お湯」なんてものもあるとあらためて実感。案の定、こんな不便な場所なのに、いつの間にかまわりは人でいっぱいになっていた。
　
» PAPERSKY #45 Colorado | Bouldering & Hot Springs Issue (no.45)