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KEENと歩く、国東半島ハイブリッド・トレイルの旅

ただ「歩く」だけでなく、文化やアートを感じられる里山歩きの旅を考えるKEEN。今回、新たにサポートするのは、1,300年もの間受け継がれてきた仏教文化の道をめぐる「峯道ロングトレイル」と「国東半島芸術祭」。舞台となる国東 […]

02/18/2014

ただ「歩く」だけでなく、文化やアートを感じられる里山歩きの旅を考えるKEEN。今回、新たにサポートするのは、1,300年もの間受け継がれてきた仏教文化の道をめぐる「峯道ロングトレイル」と「国東半島芸術祭」。舞台となる国東半島で、新しい旅のスタイルを求めて。
九州北東部に位置する大分県・国東半島。遥か昔、大陸との交易で栄えたこの地には、山に根づいた土着の文化と渡来文化が溶けあい独自の風土が育まれてきた。なかでも天台宗と宇佐神宮の八幡信仰が融合した神仏習合の山岳信仰、「六郷満山」が知られており、その影響はここに受け継がれた伝統行事の数々に見て取れる。
国東半島の春夏秋冬をフィルムに収める写真家の石川直樹さんも、この地の神秘的な風土に魅了されたひとりだ。民俗学者の折口信夫が「まれびと(異人)」と呼ぶ異形の神々を追いかけてきた石川さんは、その旅の過程で国東の伝統行事であり六郷満山文化を代表する「修生鬼会」に出合った。初めてこの地にやってきたときは、「国東に広がるとりとめのない風景をとっつきにくいと感じた」と言うが、やがてその田園風景や人々の暮らし、それに密着した祈りの行事の数々に、この地にだけ流れる独特な時間や記憶の積み重ねを見出すようになる。
「国東の山々の岩屋に棲むという鬼の祭りである『修生鬼会』などの伝統行事や、中世の荘園の有り様をそのまま残した田んぼの風景など、歴史を感じさせる景色の数々。市井の暮らしに、日本古来の精神的な営みが変わらず息づいている。その奥深さにこそ、惹かれるのでしょう」
この秋、開通する「国東峯道ロングトレイル」はこうした国東の風土や歴史を味わえる、全長150km超のロングトレイルである。六郷満山の僧たちが「峯入り」と呼ばれる修行の過程で歩く修験の道を中心に、巨石群が環状に立ち並ぶストーンサークルで知られる猪群山、「日本の原風景」とも称される田染荘の田園風景、奇岩絶峰の岩尾根を歩く中山仙境など、「み仏の里」として知られる国東の見どころを詰めこんだ。
六郷満山が紡ぐ1,300年のロマンの道を歩けば、そこかしこに神と仏が仲よくおわす有り様を見つけるだろう。取り巻く自然のすべてに神を見た八百万の信仰と、人が生きるべき道を説いた仏の教え。二つが溶け合ったトレイルは、日本人の記憶をくすぐる懐かしさに溢れている。
一方で、日本古来の文化が脈々と受け継がれてきた国東半島をアートの視点で見つめ直そうという試みが始まっている。現代アートの担い手の新しい感性と、日本人の魂ともいうべき風土や景色が出合ったら……? 来年開催予定の「国東半島芸術祭」では、ここでしか体験・鑑賞できない、国東ならではのアート作品が出品される予定だ。そのプレ・プロジェクトとして昨年から今春にかけて開催された「国東アートプロジェクト2012」も好評のうちに幕を閉じ、その一環として長崎鼻に恒久設置されたオノ・ヨーコと韓国のチェ・ジョンファの作品も注目を集めている。総合ディレクターを務める山出淳也さんに、この芸術祭の意義を語ってもらった。
「この芸術祭はアート作品をとおして五感を研ぎ澄ましてもらうことを目的としており、それには絶対的な土地の力が必要です。国東半島は自然の力が強いイメージがありますが、山の上の寺に毎日生け花が飾られていたりするような、自然のなかにも人の手や想いが生き続けている場所なんですね。そういう想いをも体験してもらうとき、果たしてアートになにができるか。それがこの芸術祭の課題だと思っています」
山出さんが考えているのは「国東ならでは」と思わせる場所−たとえば山深い寺社やダム、ため池などを舞台にしたパブリックアートだ。
「国東塔や五輪塔群のある旧千燈寺跡には、イギリスのアントニー・ゴームリーによる彫刻作品を企画中。また、並石ダムでは世界的に活躍するダンサー・演出家・振付家の勅使川原三郎さんの体験型作品。テントを担いで2〜3日、歩きつづけないとたどり着かないような集落や山のなかに作品があってもいいですね」
土地の歴史や文化に思いを馳せながら山深いトレイルを歩き、その場所ならではのアートに触れる。KEENがサポートするハイブリッドな旅の理想型は来秋、実現予定だ。修験の道の先で出合う、次の1300年を見据えたアート作品たち。そこにはどんな想いが込められているだろう。
 
Photography: Tetsuya Yamamoto Text: Ryoko Kuraishi Special thanks: Cultra
 
KEENがサポートするアートプロジェクト「国東半島芸術祭」
渡来の文化と土着の文化が混じり合い、独自の文化が育まれてきた国東半島。この地を舞台に、2014年秋「国東半島芸術祭」が開催される。アーティストが国東の歴史や風土に出合うことで生まれた数々の作品を、実際に国東半島を歩きながら鑑賞する芸術祭。また、2014年3月1日からは、芸術祭のプレイベント「国東半島アートプロジェクト」が開催される。
■国東半島アートプロジェクト
会期 2014年3月1日(土)~3月23日(日)
■国東半島芸術祭
会期 2014年 秋開催
お問い合わせ:国東半島芸術祭実行委員会事務局
TEL: 0978-25-5627
www.kunisaki.asia
 
This story originally appeared in PAPERSKY’s ARGENTINA | ART Issue (no.43)