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  • Photography: Ryota Wakimura
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ニッポンの魅力再発見の旅 鹿児島

, 2013/12/27

町に根づく文化、自然や人の魅力を“再発見”するツール・ド・ニッポンの旅。初上陸した九州・鹿児島で出会ったのは、おもてなし上手の人たちと、クラフトマンの心意気でした。いざ、異国情緒あふれる風土とおいしい食文化にふれるさつま旅へ!

編集者の岡本仁氏による編著『BE A GOOD NEIGHBOR 続・ぼくの鹿児島案内。』のキャッチコピー「鹿児島は豊かである!」に大きく頷いた。気づけば、鹿児島のよさを人へ伝えるとき“豊か”という言葉を口にしていたのだから。たくさんのおいしいもの、美しい自然や歴史文化、思いをもった人に恵まれている。「さつまもの」という巡回展には、とくにクラフトと食の豊かさがつまっていた。

“楽しい放浪”という意のRoam・松田創意さんの、職人としての放浪話には心奪われた。長野で木工家具を学び、大分の家具工房で親方のもと基礎を学んだ後、縁あって佐賀の家具工房や木製玩具の会社や、家具の町として知られる福岡・大川町でも木や家具と向き合った。創意工夫を重ねるなかで“イスの脚をもう少し細くしたい”と思い、次に松田さんは金属や鉄の扱いかたを学ぶことへ身を投じた。行く先は佐賀。まさに自分が思うものをカタチにするため、柔軟に自由に放浪をするようにして重ねた経験は、故郷・鹿児島へ戻り存分に発揮されていた。市内ならラーメン店「RIRAKU」のスツールやベンチ、東京だとスカイツリーに隣接する東京ソラマチ内「BE A GOOD NEIGHBOR COFFEE KIOSK」のハイスツールが松田さんによるプロダクトだ。2010年の立ち上げ以来、Roamの逸品は、心地のいい空間をそっと演出する。“足す”鉄と“引く”木、ふたつの素材を扱う若きつくり手の目は、奥底からまっすぐに未来を見つめているようだった。

母への贈り物がそのはじまりだった。20代前半で木工をはじめたアキヒロジンさんは、自らがキャンプへ持っていく道具としてつくったカップをもとに、ろくろで内側をなめらかに、より美しく、“飾ってかっこいいもの”を母へ贈った。八角形のフォルムに、家具職人としての技を感じる。取手や飲み口、内側の美しい局面は、力強さのなかに繊細さとやさしさがある。それが、“選ばれる”JIN CUPの誕生だった。木工職人の父の背中をともに見て育った弟の琢さんを含め、鹿児島を拠点に手しごとを続ける秋廣家の三者がつくりだすプロダクトは、市内ののどかな棚田に立つカフェ&ギャラリー「蒼(AO)」でたっぷりふれることができる。

前述のガイドブック出版なども手がけるランドスケーププロダクツ代表の中原慎一郎さんは、“豊か”な故郷・鹿児島で勢力的に活動するひとり。かつて彼が町で始めた「DWELL」というお店の話を、革製品「RHYTHM」の飯伏正一郎さんが懐かしそうに話してくれた。人が出会い交わり、つながり伝わる“鹿児島”の原点ともいえるのが、その場所だった。もともと中原さんが始めたクラフトフェア「ash」は、いまでは飯伏さんやアキヒロさんたちが事務局の主体を担っている。

そういえば、鹿児島は東南アジアの最北端のような場所だと言った人がいた、という話を聞いた。南の海からやってくる外国との交易を、幕末にいち早く始めた薩摩藩は、もともと保守的でよそ者を受け入れない鎖国主義な性質をもっていた。と同時に、いいものであれば新しきを受け入れようとする柔軟性も携えていた。薩摩の先人たちは、交渉力や外交力、先見性や積極性をもって新しいニッポンを切り開くリーダーとして時代を生きていた。現代も、大好きな地元をアピールする先人の活動を見て、若い世代がふるさと・鹿児島の町を選択している。飯伏さんが仲間と立ち上げた「216 JUNCTION STORE」は、まさに新しい出会いやコミュニティの生まれる場なのだ。

たくさんの美味しいものとの出会いもあった。市内から約1時間のいちき串木野市へ、大和桜酒造を訪ねた。甑を使って米をていねいに蒸し、洗米もすべて手作業。原料の麹はむろ蓋と呼ばれる木製の箱で自然換気し、少量ずつテマヒマかけてつくりあげる。杜氏・若松徹幹さんの父は、かつて思うように売れず日々の暮らしが苦しいときも、手間を惜しむことなく自分の方法を信じつづけていた。「手をかければかけるほどに、手を抜きたくなくなるでしょ」と自らのモチベーションを高め、“信”の心で芋焼酎をつくりつづける徹幹さん。昔から鹿児島の人々がつかうフレーズ“よか晩”(楽しい夜)に着目し、大事な人と、おいしい食事とお酒を囲んで過ごす時間も一緒に提案する。

忘れられない味は、菓子処 松和堂の薩摩名菓かるかん(とレモンケーキ)。半世紀もの長きにわたり、いまも夫婦ふたりで毎朝、息をぴったりとあわせて県内産の自然薯と米粉、砂糖だけを使ったまっ白い生地を、せっせと仕込む。もちもちの生地に上品なこしあんを包んだかるかんは素朴であったかい。

使えば、つくった人の心が届く。食べれば、つくった人の顔が浮かぶ。懐しくて、人にホッとする鹿児島。鹿児島は“人”が心を豊かにする町なんだと思う。
 
PAPERSKY Tour de Nippon in 鹿児島(2013.11.23-24開催)
http://www.papersky.jp/tour/kagoshima/

PAPERSKY Tour de Nippon in 鹿児島 Movie
https://youtu.be/FlPA-wqBCvY

» PAPERSKY’s ARGENTINA | ART Issue (no.43)

» Bicycle Map vol.6 Kagoshima 食とクラフトを自転車でめぐるマップ

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