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  • Photography: Tetsuya Yamamoto
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旅のパートナー 伊藤弘さんと行くNZロングハイク&ライド

, 2013/05/07

太古から守られてきた巨木の森と、美しい海岸線が続く北島。南島では、南極からの風が優しくたなびく勇壮な山脈が連なる。南北に長く伸びるニュージーランドの陸地にはじつに多様な自然が色濃く残り、世界中の旅人を惹きつけてやまない。このワイルドな自然のただなかに分け入るため、僕らは「ロング」という旅のコンセプトを設定した。かの地の旅人は皆、先を急がない。鳥の声に耳を澄ませながらゆっくりとトラック(山道)を踏みしめ、カヤックを漕ぎ、マウンテンバイクで土の感触を確かめ、味わう。この国ではピークハントにとらわれない山歩きの文化「トランピング」が深く根づき、国民の多くが長く、ゆっくり旅を進めていくことの意義を理解している。

僕らがまず向かったのは北島の南部にある首都・ウェリントン。ここからマウンテンバイクをフェリーへ持ちこみ、南島へと移動。ハイクとバイクの双方を楽しめる、71kmのロングトラック「クィーンシャーロット」を目指した。ペダルをこぎだしてみて驚くのは、コースの走りやすさだ。急峻な山坂は皆無。緩いアップダウンはすこぶるバイカーに優しく、少しもバイクを手押しすることなく、乗りつづけることができる。こんなに恵まれたオフロードがバイカーに開放されているなんて、うらやましいかぎりだ。日頃から自転車に親しみ、これまでさまざまな環境でのサイクリングを経験した伊藤さんもこのトラックを心底、堪能していた。
「ほかのバイカーやハイカーをほとんど気にせず、これだけ走れるのはすごい。日本でこういうコースがあったら、渋滞しているのかも。ニュージーランドをめぐってみてまず気づくのは、人と自然のいいバランス感ですかね。人影が少ないからか、目の前の自然の風景が身体にすっと入ってくる」

日頃、東京の中心でグラフィックデザインの仕事に没頭している伊藤さん。アウトドアでの遊びに引きこまれたのは、合理性を追求するデザインの仕事と同様、機能を研ぎ澄ませたがゆえに美しいアウトドアギアに魅せられたことがきっかけだった。所有するテントはなんと10以上。自転車も複数台使い分け、日常的に都会と自然の合間を行き来している。そんな伊藤さんが近年、アウトドアに出かけるのは、都会とは質の異なる情報に刺激を受けたいからだとか。人影を感じることなく自然界に没入できるニュージーランドの環境は、まさに理想的な情報インプットの場だと語る。
「癒しを求めてアウトドアに出かける人って多いと思いますけど、僕はちょっとニュアンスが違って、都会とは全然違う種類の刺激を求めているのかも。山や緑のなかでは見るもの、聞くものも違えば、都会にいるときよりもより自分の身体を意識することになります。その感じがとても面白いんです。そういう環境に身を置くといつもとは異なる脳みそを使うというか、ふだん使わない脳の部分をマッサージされるような。ニュージーランドのように人が少なくて自然の質量が圧倒的だと、とくにそう感じるのかも知れません」

国土は日本の約70%程度の広さ。そしてここに住む人間の数は東京23区の人口の半分にも満たない。キャンプ地やトラックが人でごった返すなんて状況はこの国では皆無。ひとたび自然のなかに飛びこめば、雑音を感じることなくその状況に同化したような感触を得られる。この国で感じるのはたしかに、人と自然の理想的なバランスだ。

なだらかなトラックでのバイクライドを続け、山中で数日を過ごした後、僕らは山を降りた。自転車で山道を駆ける爽快感について、伊藤さんはあらためてこう語る。
「東京に住む僕にとって自転車は日常の一部。渋滞も関係ないし、いっさい人に頼らず進むことができる。どんなスピードや経路を選ぶか、完全に自分でコントロールできるのが自転車のいいところだと思う。だから僕にとってここはパラダイスのように感じる。山道だって自分の思いどおりに走れるよう緩やかにつくられているし、そのおかげでストレスフリーで風景を眺めることもできる。人が少ないから時には適度にスピードを出して楽しめますしね。街に降りても、自転車専用道路が驚くほど整っていて、平坦なロードをゆっくり走れる。この国の人たちは自転車の楽しみかたとか利点を知り尽くしているって思えますよね」

バイクでの旅を終えた後は、いよいよトランピングへ。ここからは、グレートウォークと呼ばれる9つの著名なコースのうち、南島にあるコースを次々と踏破していく。広大な海を取り巻くようにコースがつくられたエイベル・タズマン・コースト・トラック。深い森と静謐な湖の、息を呑む風景が続くミルフォード・トラック。そして、渓谷と滝の風景が目に眩しいルートバーン・トラック。どれもが絶景の連続で、飽きさせないどころか、3~5泊のロングハイクを終えてもまだ歩き足りない気分に。道中、出会ったチェコからの若い旅人はこう言って笑った。
「2ヵ月かけてこの国を歩いているけど、それでもまだ足りないよ。ここは歩くべき道が多すぎるからね。でも、いくらいろいろ見たいからといって、急いで歩いても意味がない。だから、2ヵ月で歩ききれなければ、次の機会にその地点から歩き直そうと思ってる。どこまでも歩きたくなる道と自然がこの国にはあるんだ」

ここではトランピング・トラックの多くが、DOC(Department Of Conservation=自然保護省)という国の機関によって管理される。ロングハイクを前提に考え尽くされたコースの設定は、まさにエンターテインメントの極みだ。ピークへ急ぐというより、いかに風光明媚な風景と接することができるかに重きが置かれ、勇壮な山並みをぐるりと周遊しながら徐々に高度を上げていくといった趣が強い。道中にはHUT(ハット)と呼ばれる山小屋が点在。これらもDOCによって整備され、数日かけてのトランピングを頼もしくサポートしてくれる。まさに国をあげての、山歩きを後押しする体制。この国は、自然のなかで遊ぶことにまったく妥協がないのだ。鳥の唄を聞きながら豊かに生い茂る緑の木々の合間を抜け、僕らは歩けば歩くほど、この国の神髄に迫っていくような感覚を覚えた。ニュージーランドで長旅をして得られた感触について、伊藤さんはこう表現する。
「そもそも、絶海の孤島であったがゆえに、この国は生態系が守られていたわけですよね。だから鳥だって敵と戦うことなく、植物もこれだけ繁栄できたと聞いて納得がいきました。じつは地球上でもきわめて特殊な環境であって、僕らはそのなかを歩かせてもらっている。特別な体験ですよね。キャンプ中にもテントのまわりにたくさんの飛べない鳥が遊んでいて、山深く入っていけばいくほど、植物とか鳥の存在が際立って感じるようにもなる。長い日数、山にいるととにかく“共生”っていう言葉が頭に浮かぶ。この感覚って教えられるものでもないし、こういう旅をしなければ絶対に身体に入ってこないものだと思うんです」

伊藤弘 | Hiroshi Ito | グラフィックデザイナー
93年に京都でデザインチーム「groovisions」を設立。PIZZICATO FIVEのライヴヴィジュアルを手がけたのをきっかけに活動の幅を一気に広げ、97年に東京へ。現在はgroovisions代表として国内外からのデザイン、ディレクション案件を幅広く手がける。CDのパッケージデザイン、書籍のブックデザイン、ブランドのアートディレクション、音楽PVやモーショングラフィック制作など、活動の幅は多岐にわたる。www.groovisions.com

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