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「離れて見る」ことの効用|ワイズベッカーの視点

先日、少しだけ長い休みを取ってパリに行ってきた。最近は仕事柄、旅といえば国内旅行がほとんどである。初めて訪ねる地方への旅はある意味、海外旅行のようなものだが、やはり13時間も飛行機に乗って降り立った地はにおいから違う。何 […]

01/04/2013

先日、少しだけ長い休みを取ってパリに行ってきた。最近は仕事柄、旅といえば国内旅行がほとんどである。初めて訪ねる地方への旅はある意味、海外旅行のようなものだが、やはり13時間も飛行機に乗って降り立った地はにおいから違う。何年ぶりかに訪れた海外の街のにおいを嗅ぐと不思議な懐かしさがこみあげてくる。
パリ旅行の目的のひとつは、画家でありイラストレーターのフィリップ・ワイズベッカーに会いにいくことだった。ワイズベッカーを初めて知ったのはいまから10年くらい前。日本で出版された一冊の作品集がきっかけだ。『HAND TOOLS』と題したその本に描かれていたのは大工道具や刃物に刷毛など、なんと昔ながらの日本の道具ばかり。シンプルな線で描かれた几帳面なタッチと平面的なパースが印象的ですぐにその絵の虜になった。見慣れていたはずの道具が驚くほど新鮮に、魅力的に描かれていた。
ワイズベッカーはかつて京都に4カ月ほど滞在していたことがある。初めは新鮮に映った日本の伝統的な寺社仏閣も、滞在が長くなるにつれ興味が湧かなくなったそうだ。しだいに彼の関心は、街を走るタクシー、町工場、建材、配管、道具など、生活感のある身近なものへと移っていった。そうして生まれた作品のひとつが、大阪の道具街で見たものをモチーフに描いた先の道具の絵である。
昔から海外のモノが大好きで、追いかけ、憧れつづけてきた。そんな自分が海外でモノを見るときのわくわくするような気持ちと視線であらためて日本のモノを眺めてみようと思って始めたのがいまの店である。日本人にとって身近すぎて気がついていない価値や魅力が、日本にはもっとたくさんあるんじゃないか。少し離れたところから身近な世界を眺めてみると意外な発見があるよ。ワイズベッカーの絵はそんなことに気づかせてくれたのである。