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  • Photography: Cameron Allan Mackean
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神の山を描く|TOKYO BATHING | 東京 銭湯 2

, 2012/07/09

まぶしい昼の光が、人気のない銭湯にきれいな縞模様をつくっている。東京にふたりしかいない銭湯絵師のひとり、丸山清人は、ペンキの壁画の富士山を描きなおすというまたとない仕事に挑む。丸山は絵を描く手を止め、コーヒーの缶やペンキの缶のあいだを通り抜け、私たちの前に腰を下ろした。身に着けているネイビーブルーのTシャツ、作業用ズボン、キャンバス地のシューズは、古い青や白のペンキだらけだ。

座った丸山の向こうには、作業半ばでペンキがまだ生乾きの富士山の絵が、午後の光を浴びている。4年前にこの銭湯で作業したとき、富士山は右側にある男湯の壁にしかなかった。今日は女湯の壁に富士山を描いている。「男湯と女湯で半々になるように、壁のまんなかに描いてくれと頼まれることがある」丸山はふたつのあいだの壁を指差して、顔をしかめた。「そうするためには富士山を大きく描かなきゃならない。それがどうも苦手でね。山を大きく描くのはおっかないもんだ」。

丸山は昔から続くペンキ絵師の家系の出身だが、後継者はいない。弟子がいたこともあるが、骨折して辞めてしまった。ペンキ絵師はあまり儲からないし、楽な仕事でもない。1970年代は毎日のように銭湯に呼ばれて絵を描き、東京に同業者が15人以上いたのに、いまでは月に5件あればいいほうだ。丸山はしわの刻まれた顔で商売道具を見やった。「いまの若いもんは、これがうまくなるために必要な集中力もなければ、忍耐力もない。(もうひとりの絵師の)中島さんと助手が辞めたら、ペンキ絵師はいなくなる。悲しいね」

鮮やかな色でシンプルな形を描くのが丸山の画風である。「色と風景がいちばん難しい。けど、なによりも難しいのは色だな」。ここ何十年間で銭湯絵に描かれる風景は変化したのに、色はほとんど変わっていないのは、そのせいかもしれない。ペンキ絵師は富士山以外のものも描いてきた。一時は、壁画が富士山の銭湯は40%ほど、残りの60%が「ミッキーマウスとかガンダムとかドラえもんを描いてほしがった」と丸山は眉間のしわをいっそう深くした。「本当に嫌だったな」。エベレスト、ビクトリア滝、レインボーブリッジなど、富士山以外の風景に挑戦した絵師もいた。しかし、そんな絵はすぐに塗りつぶされ、描き替えられた。「一度、城を描こうとしたら富士山になっちまった。ほかの山ならごまかせるが、富士山には嘘はつけねえ」丸山は厳かに言う。

壁画の中心が富士山なのはまちがいないが、絵の狙いは山麓の水にある。壁絵の目的は、お湯に浸かっている人たちに、神の山から広がる聖なる水に浸かっているような錯覚を起こさせることなのだ。この崇高な錯覚を、ペンキ絵師はなによりも大切にしている。ペンキ絵の富士山には、描いていいことと悪いことがはっきりと決まっている。たとえば夕暮れの赤く染まった富士を描いてはならない。沈む夕日は死を連想させるからだ。そして、水の描きかたには絵師のスタイルが表れる。中島は富士の下に荒々しく砕ける波を描くが、丸山の水はどこまでも静かである。ひとつの時代の終わりに立ち合っているはずなのに、丸山は彼の描く水のように静かに、満ち足りた表情を浮かべている。

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The second of our three-part series on The Japanese Sento (Parts 1 & 3)

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