Menu Links
  • Photography: Yohei Natuse

MOUNTAIN CLUB 尾瀬スケッチ&トレッキング

, 2011/10/11

10月8日9日、Mountain Club第4回目イベントを尾瀬にて行った。今回のテーマは「スケッチ&トレッキング」。秋が深まりつつある尾瀬を、スケッチブック片手にゆるりと歩こうというものだ。平坦な木道が続く尾瀬の湿原はぶらぶら歩くのにうってつけで、穏やかで美しい風景もまた絵心をくすぐる。まさにスケッチ山行にぴったりの場所である。尾瀬と言えば尾瀬沼、尾瀬ケ原、燧ヶ岳、至仏山が有名だが、今回はあえて尾瀬沼だけを訪れ、一日のコースタイムも3〜4時間にとどめた。のんびりと、スケッチをする時間を大切にするためである。暑くもなく、寒すぎることもない、秋の穏やかな陽射しが降り注ぐ季節も、のんびりしたスケッチ山行にぴったりである。

JR沼田駅に集合し、登山口となる大清水へ向かう。今回の参加者は10名。第一回目から参加してくれているリピーターの方もいれば初めて参加してくれた方々もいる。リピーターの方々は、見慣れた顔との再会に自然と笑顔になる。

大清水から今晩の宿泊地である長蔵小屋までは、三平峠を越える峠道を通って3時間ほど。この山道はかつて沼田街道として交易に使用されていた。三平峠でスケッチブックを開く。はじめはためらいがあるものの、描き出してしまえば皆無心になってそれぞれ持参したペンや色鉛筆を走らせる。コケ、看板、木の実など、さまざまな「尾瀬」を描きとめ、長蔵小屋へ向かった。

三平峠から下り出すと、木立の間から青空を映した尾瀬沼が見える。秋晴れのさわやかな一日。ナナカマドを筆頭に山の木々は暖色に色づきはじめ、沼の畔は草モミジに染まっている。その明るい木の葉を透かして届く陽射しが登山道を暖かく包み込む。尾瀬沼の奥には東北でもっとも高い燧ヶ岳がどっしりと聳えている。

秋晴れの3連休ということもあり、長蔵小屋は多くの登山者で賑わっていた。尾瀬に住み、尾瀬の自然を開発から守った平野長蔵が建てた小屋は、日本の山小屋の中でも特に有名で人気の高い山小屋のひとつである。部屋に荷物を置いてから、5分ほど歩いた場所にある「ヤナギランの丘」へ向かった。そこは尾瀬沼や長蔵小屋を見下ろす眺めの良い丘で、平野長蔵をはじめ、長蔵小屋を切り盛りし、尾瀬を開発の波から守った平野家3代のお墓が立ち並んでいる。丘に佇み、スケッチブックを開く。丘から眺める尾瀬沼と森の中に佇む山小屋を描く人、お墓に刻まれた詩を写し取る人、枯れかけた植物を描く人。それぞれの視点で画題を選ぶ様子が興味深い。少しずつ肌寒さを覚えるようになり小屋へ戻った。

山小屋の食事は一品一品手を込んで作られたものだった。山小屋とは思えない丁寧な料理に舌鼓を打ち、食後、今回参加してくれた方がコーヒーを淹れてくれることになった。写真家のMさんと一緒に参加してくれたSさんはコーヒーを研究する日々を過ごしており、自分で焙煎したコーヒー豆、ミル、ドリッパー、ポットと、コーヒー道具一式をバックパックに詰めて参加してくれたのである。SさんとMさんの共同作業で、洗面所の自炊スペースで湯を沸かし、部屋でコーヒーを丁寧に淹れてくれる。部屋中が芳しい匂いに包まれる。次に淹れてくれたのは、アールグレイの茶葉と一緒に淹れたコーヒー。ほのかに紅茶の香りがする、はじめての味わいだった。その後、別館にあるカフェへ。ピアノが置かれ、ランプに照らされた部屋では、ビール、ワインやウイスキーもたのしめる。尾瀬のラベルが張られた赤ワインを注文し、閉店まで歓談のひとときをたのしんだ。

翌日も秋晴れだった。8時に長蔵小屋を出発し、尾瀬沼の対岸にある沼尻休憩所を目指す。およそ一時間の行程。木道が続く平坦な道を、尾瀬沼の水面を眺めながら歩く絶好のハイキングコースである。

沼尻休憩所も多くの人々で賑わっていた。尾瀬沼の湖畔に佇む壁のない建物で、尾瀬沼を渡る風に触れながら飲み物や軽食がたのしめる。暖かな陽射しの下のベンチに腰を下ろし、今日もスケッチブックを取り出す。ここでもSさんにコーヒーを淹れてもらう。穏やかな尾瀬沼の畔でコーヒー片手に絵を描く。それはなんとも言えない贅沢で幸福な時間である。およそ2時間、尾瀬の時間をゆっくりと過ごしたあと、尾瀬沼を一周して三平峠へと登り返し、大清水へと下った。心なしか、昨日よりも木の葉が黄色く色づいているような気がした。

山へ行き、スケッチブックに絵や言葉をしたためる。通常の登山で、2時間も休憩をする人はほとんどいないだろう。絵を描くことを通して、その場所に腰を下ろし、滞在する。絵を描くということは対象とじっくりと向かい合い、観察し、その対象とある関係を持つことに他ならない。それは風景だったり、人だったり、植物だったり、山小屋だったり、山道具だったりするのだが、急いで歩いたのでは気にも留めずに通り過ぎるだけの「もの」が、絵を描くことでその人の記憶に刻み込まれ、「特別なもの」になる。そして、没頭して絵を描き、描き終えて顔を上げたときに思うだろう。絵を描く前よりも、心が山に近づいていることを。山で絵を描くということは、作品としての絵を残すという以上に、山(山にあるもの)と自分とをある特別な関係で結び付けることでもあるのだろう。その時間、その空間が、心を少しだけ豊かにしてくれるような気がする。

尾瀬の時間と空間を共有することができた参加者の方々、山旅に素敵なコーヒーをブレンドしてくれたSさんとMさん。Mountain Clubの輪がひと回り広がった二日間だった。次回はスノーシューイベントを開催予定。顔なじみのメンバ―はもちろん、新しい仲間たちとの出会いが今から待ち遠しい。

※ Papersky facebookページにイベントの写真をアップしました。

Tags:









やかん選び|PAPERSKY Japan club

数ある日用品、キッチン道具のなかでもやかんは特別な存在である。私たち日本人の暮らしにいつも寄り添って… »STORY

PAPERSKY ツール・ド・ニッポン in 茨城 開催レポート

新緑美しい5月最後の週末は、それはもうアツイ(気温も)!茨城での自転車旅を過ごすことができました。日… »STORY

藍染トートバッグ|PAPERSKY STORE

京都・丹後を拠点とする「高蔵染」とつくった、藍色に染まったボディに滴らせたしぶきが美しいトートバッグ… »STORY

「ムダが雑誌を伝説にした」ルーカス B.B.インタビュー @ Fika

CINRA.NETとVOLVOが送る、北欧カルチャーマガジン「Fika」にて、PAPERSKY編集長… »STORY

自転車とキャンプをテーマにした「BIKE&CAMP 3THE FINAL」

自転車で行く「旅」をキーワードに、輪行&キャンプツーリング、バイクパッキングなどの魅力を体験できるイ… »STORY

Dry Bag|PAPERSKY STORE

「ORTLIEB」×「PAPERSKY」の完全防水バッグ。カヤックなど水辺でのアクティビティやバイク… »STORY

台湾 Hike & Bike 発刊記念トークイベント @ 山と道研究所

6/29(土)、鎌倉にある「山と道研究所」にて、PAPERSKY最新号「台湾 Hike & Bike… »STORY

PAPERSKY STORE @ 森、道、市場 2019

5月31日(金)〜6月2日(日)に開催される、モノとごはんと音楽の野外フェスイベント「森、道、市場 … »STORY

SABA Tシャツ|PAPERSKY STORE

美味しそうなサバがプリントされたTシャツ。福井・若狭から京都へと続く街道をつかって運ばれた海産物のな… »STORY

Lee RIDERS presents VINYL HUNTING TOURS vol.44 森俊二

ゲストミュージシャンとともに個性的なレコードショップをめぐり、とっておきの一枚を探して紹介する、Le… »STORY

PAPERSKY ツール・ド・ニッポン in 長崎五島 ムービー

2019年3月に開催したPAPERSKY Tour de Nippon in 長崎五島のレポート映像… »STORY

LUCA-MON ON THE ROAD vol.5「その先の向こう」

編集長ルーカスの旅をモデルに、イラストレーターの間弓浩司さんが描く漫画「Luca-mon on th… »STORY

地球儀クッション Cushion Globe|PAPERSKY STORE

旅好きな方におすすめしたい地球儀クッション。バスケットボールほどのサイズで、自宅でくつろぎながら、次… »STORY

フクシマアズサのほうき|日本のつくり手 第16回

つくばにほうきづくりが伝わったのは明治時代のこと。栃木県の鹿沼で技術を習った行商人が地元に持ち帰り、… »STORY

BIKE | seaside KYOTO | Hike & Bike JAPAN

PAPERSKY BOOKSが贈る、「海の京都」を目指して自転車で走る旅人のためのガイド本。京都駅か… »STORY

ニッポンの魅力再発見の旅 茨城

東京から特急列車で約75分の距離にありながら、可住地面積は全国上位。毎年、農業産出額は全国トップ3入… »STORY

風景をつくる眼。中原慎一郎が出会ったアート、デザイン、工芸

鹿児島県霧島アートの森にて、「風景をつくる眼。中原慎一郎が出会ったアート、デザイン、工芸」が4… »STORY

HIKE | KISOJI- Gifu/Nagano | Hike & Bike JAPAN

PAPERSKY BOOKSが贈る、「木曽路」を歩く旅人のためのガイド本(2部構成)。パート1では、… »STORY

「PAPERSKY ツール・ド・ニッポン in 茨城」参加募集スタート

令和元年、最初のツール・ド・ニッポンが旅するのは茨城県の霞ヶ浦と水戸。水戸黄門として知られる徳川光圀… »STORY

手ぬぐい Traveler’s Towels| PAPERSKY STORE

PAPERSKYが提案する、日本の魅力再発見の旅プロジェクト PAPERSKY Tour de Ni… »STORY

成瀬洋平水彩画展 「GIFT—北アルプスよりー」

安曇野、常念岳の麓にある安曇野山岳美術館で展覧会を行います。北アルプスの麓ということで、これまで描き… »STORY

DIAGNL ninja strap|PAPERSKY STORE

DIAGNL ninja strapは、"伸縮自在" のカメラストラップ。使い方や体型に合わせてサイ… »STORY

メリノ ロングスリーブTシャツ|PAPERSKY STORE

PAPERSKY × icebreaker コラボのロングスリーブTシャツ。メリノウールを使用したボ… »STORY

[Bike] SEASIDE KYOTO | Hike & Bike JAPAN

PAPERSKY BOOKSが贈る、「海の京都」を目指して自転車で走る旅人のためのガイド本。京都駅か… »STORY

「PAPERSKY ツール・ド・ニッポン in 長崎五島」開催レポート

九州本土の西端、大小140あまりの島々からなる五島列島の北側に位置する新上五島町で開催した、今年最初… »STORY

PAPERSKY STORE @ Off the Grid 2019

4/6(土)・4/7(日)に開催されるアウトドア展示会「Off the Grid 2019」に、PA… »STORY

place
尾瀬

© 2008-2019 Knee High Media. All Rights Reserved.