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  • Photography: Hiroshi Eguchi

鳥の目で森を見る「IN THE WILDS」

, 2011/08/16

イラストレーターで建築家のナイジェル・ピークは、アイルランドの海岸沿い、町には大通りが一本だけという小さな田舎町に住んでいる。建築に関しては優秀な賞を獲ったこともあったが、現在は建築学生相手にチューターをやっているらしい。本業のイラストはというと、ごく細いペンでさまざまな色の線を描き、まるでレンガを積み重ねるようにその絵を完成させていくというスタイル。エルメスや『dwell』誌など多くのクライアントワークもこなす彼だが、彼の最新本『IN THE WILDS』はタイトルどおり、彼の住む田舎町の景色を描いたものだ。

彼の朝は近所の散歩から始まる。毎朝決まった時間に散歩に出かけ、時には立ち止まってスケッチをする姿は、郵便屋にまちがえられることもあるという。彼が描くのは近所の農場や野原、森、そして鳥。ただしふつうの絵ではない。
「自然はたくさんのちいさなパーツの組みあわせでできている」という彼にかかれば、畑であればいくつかの畑を上から見た畝の模様が細かく描き分けられ、納屋であれば茶色のトタン屋根が無数に組みあわさり、ひとつの模様が形づくられる。積み重なった薪やフェンスの模様は格好の描写対象だ。視点は縦横無尽に移動し、時に上からの眺めを描きとめ、時にいくつかの風景を記録して束ねることで、ひとつの作品ができあがる。鳥の鳴き声をモールス信号のようにして描き分けたり、飛行の軌跡を流線型の模様にしたり。こうなると彼にだけ見えているものがあるとしか思えない。

もちろん旅にでも出て非日常の風景に出会える機会があればいいけれど、なかなかそうもいかないし、毎日単調なことばかりで家のまわりの景色にも飽きてしまった…。そんな人にこそ、この本を手にとってみてほしい。

IN THE WILDS
Nigel Peake, Princeton Architectural Press









place
アイルランド

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