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  • TOKAIDOPhotography: Tetsuya Yamamoto

東海道の旅のパートナー、現代の旅人・ルーカス B.B.

, 2011/07/30

「いまって、昔の人の考えかたとか、過去のものを一回ゆっくりと見直してみるべき時代なんじゃないかと思う」
ルーカス編集長はそう言って、東海道五十三次をめぐる旅に誘ってきた。新幹線なら東京から京都まで、2時間強。それを、江戸時代の人々が歩いたのと同じ旧道をのんびりたどって踏破するという。A地点からB地点まで移動するのが旅だけど、飛行機とか新幹線でビュンと行ってリゾートホテルに泊まるのとは違う旅の楽しみってあるじゃない? 目的地にたどり着くまでの間にこそ、本当の旅があると思う。A to B みたいにポイントだけしか見ていない旅だと、間を楽しめない。それだとすごくエンプティな感じになっちゃうよね。それは人生でも同じことがいえるんじゃないかな。就職して出世しようとか、お金持ちになろうとか、それだけを考えていたらエンプティになっちゃう。本当は、その間がおもしろいんだから」

効率ばかりを求めず、目的地にたどり着くまでの紆余曲折そのものを楽しもうという、積極的な珍道中のすすめである。ルーカスをそんな旅へと駆り立てた要因のひとつは、先の東日本大震災による原子力発電所の事故。そしてもうひとつの後押しとなったのが、『180° SOUTH/ワンエイティ・サウス』という映画だ。アウトドアブランド「パタゴニア」創始者のイヴォン・シュイナードと、その親友で「ザ・ノース・フェイス」創始者のダグ・トンプキンス。このふたりが1968年、カリフォルニアのベンチュラから南米パタゴニアの高峰コルコバト山を目指した旅の軌跡を、現代の青年が再びたどるという内容だ。

「この映画がよかったのは、東海道を歩くのと同じように過去のもの、昔のものを見直すというテーマがあったから。現在から180°戻って過去を見てみる。だけど戻ること自体がいいということではなくて、過去のよかったことを改めて知ったり、捨ててきたものをもう一度ちゃんと見て先に進もうというのがコンセプトにあったから、共感した。それで東海道を歩く旅、というのもピンと来て」
かくしてルーカスの頭のなかでイヴォン&ダグが、弥次さん&喜多さんと奇跡の邂逅を果し、『東海道中膝栗毛』をトレースする旅は始まりを告げた。
新幹線なら数秒で、すっ飛ばしてしまうような険しい峠も、歩いて訪ねたことで、道中の思い出に深く刻まれた。スローな旅には、スローな旅でしか見えないものがあるのだ。
「今回の旅には、昔のスピード感を知りたいという意図もあったよね。新幹線で10分の距離が、歩くと1日かかったり。でもそれを体験することで、昔の人の気持ちや考えかたも少しわかったような気がする。たぶんその体験は、これからの自分の生きかたにもすごく役立つと思う。江戸時代のまま残っている道もあったりして、同じ道を400年前の人も行き交っていたかと思うとすごく興味深いよね。過去と現在と未来が全部一緒に動いているんじゃないかっていう感じにさせられる。でも歩きだと本当に疲れていろんなところに立ち寄る余裕がなくなるから (笑)、クルマや自転車でめぐってみるのもいいよね。それならお寺や資料館なんかにも、気軽に立ち寄れるだろうし」

「日本には“品” “謙虚さ” “雰囲気”という基準が絶対にあるよね。僕はその3つの言葉と、それを体現するような生きかたがすごく好きで、それは僕が日本にいる理由でもあるんだけど、それを今回の旅でも感じることができたね。でも田子ノ浦みたいに歌川広重の浮世絵とは景色がまったく変わっていて、ショックを受けたところもあった。国道ができて、東海道線も敷かれたけど、なにか新しいものをつくるときには、いいものを壊すんじゃなくて、守りながら新しいものを取り入れることが大事だと思う。もともと日本人はそういうことが得意なはずだけど、どこかでずれた気がするよね」
古きを訪ね、新しい生きかたを考える。そんなテーマを掲げたルーカス編集長に連れられて出かけた、東海道五十三次をめぐる旅。それは文字どおり、温故知新の道中となったのだった。

ルーカスB.B. Lucas Badtke-Berkow
1971年、アメリカ生まれ。編集人。カリフォルニア大学卒業後、来日。(有)ニーハイメディアジャパン代表として、『PAPERSKY』やファミリー誌『mammoth』を発行しながら、ウェブサイトやイベントプロデュースなど幅広く活動中。これまでに手がけた雑誌に『TOKION』や『metro min.』、『PLANTED』などがある。www.khmj.com
 
This story originally appeared in PAPERSKY’s Edo Tokaido Road Issue (no.36)

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