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原研哉 × ガリット・ガオン トークショー

11月6日、週末のアップルストア銀座でグラフィックデザイナーの原研哉とイスラエルのデザイン・ミュージアム・ホロンのチーフキュレーター、ガリット・ガオンによるトークショーが行われた。 今年の6月、原研哉ディレクションの「T […]

11/08/2010

11月6日、週末のアップルストア銀座でグラフィックデザイナーの原研哉とイスラエルのデザイン・ミュージアム・ホロンのチーフキュレーター、ガリット・ガオンによるトークショーが行われた。 今年の6月、原研哉ディレクションの「TOKYO FIBER ’09―SENSEWARE」展がイスラエルのデザイン・ミュージアム・ホロンに巡回したことがきっかけで実現した東京での対談。地中海の東岸に位置するイスラエルがヨーロッパともアメリカとも違う特殊な文化的レイヤーを持っていること、そして「『EAST MEETS WEST…世界は東と西でできている』という発想からそろそろ日本の人たちは目覚めないといけない。」という原研哉の明確なメッセージとともにトークが始まった。
ガリットと原が言葉を交わすきっかけとなったのは、SENSEWARE展が初めて披露されたミラノサローネ。展覧会場に入って10秒で「この展覧会をイスラエルに持ち帰らなければいけないと思った」というガリット。おそらく彼女は入り口にあった展覧会のシンボル的作品―超撥水加工された布の上に「SENSEWARE」の文字がしみ出す無数の水滴で描かれ、やがて流れ落ちて消えて行く―テクノロジーの可能性をデザインで具現化するその細部まで徹底された取り組みに心打たれたのだろう。原も、ミラノサローネで作品を発表することで西ヨーロッパから北欧までその話題が浸透していく…という状況の中、ガリットの熱心な依頼に応え、かねてからその地理的・文化的立ち位置に興味を持っていたイスラエルへの巡回を決めた。
まずガリットが、イスラエルに新しくできたデザインミュージアム…ひいては彼女自身の「ミュージアム」というものに対する考えを述べる。ミュージアムは「問いかけを与え」「経験を持ち帰る」場であるべきという彼女の明快なアイディアは、新しい繊維素材に秘められた可能性をデザインで具現化し、日本の産業が進むべき道を提案する、というSENSEWARE展のコンセプトにぴったりと合致したに違いない。実際にイスラエルで行われた展覧会は2ヶ月ほどの短かい会期ながら30,000人超の来場者数を記録した。また、2度、3度と繰り返し展覧会を訪れ、2時間のオーディオガイドに最初から最後まで耳を傾けるといった光景も珍しいものではなく、「これこそがデザインミュージアムで紹介されるべき展覧会だ」というイスラエル人達の熱い賞賛によって、巡回の実現に費やされた関係者の多大な努力が報われることとなった。
続いて原研哉がSENSEWARE展の説明を行う。日本の産業がこれから採るべきものづくりの道を常々提言し続けている氏は、新しい人工繊維を国内外のデザイナー達に託した。そして生み出された作品は、既成概念を覆すような長さや薄さを持っていたり、ロボット技術と融合した超ハイテクながらもユーモラスなものであったり、或いは自由な造形と光を組み合わせた幻想世界であったり。それらの提案の集合体がSENSEWARE展という形に結実したのである。
この日原が紹介した作品の中で今後の可能性を一番感じさせたのは生分解性(土に還る)を持つ繊維によって作られたプランター。テクノロジーは自然と相容れない、という常々二極化した議論に終始しがちな我々に「テクノロジーが進化すれば再び自然と再び交わっていく」という彼の情熱を込めた主張が印象的であった。
また昨今日本のデザインシーンにおいて日本の伝統文化がモチーフとして多用される中、SENSEWARE展にはそうした「日本的なるもののアイコン」は一切登場しないことも注目すべき点である。そうしたものを排除しても「まるで日本に旅行したような」感覚を楽しみ、細部まで行き届いた作品の完成度やその精巧なテクノロジーを「とても日本的だと感じた」というイスラエル現地の率直な反応に、原は強い感銘を受けたのだった。
現在、デザイン・ミューアジム・ホロンの展覧会「Mechanical Couture」ではISSEY MIYAKEのクリエイティブディレクター、藤原大とダイソンによる共同作品が紹介されている。その一方で、現在東京で熱心に展覧会を見て回るガリット。デザインにおける日本とイスラエルの次のコラボレーションが実現する機会もそう遠いものではないだろう。
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