「パリジェンヌ」じゃなくて「パリの女」なのがこの本のポイントだ。
最初に発行されたのは1954年。オランダ人の写真家ニコ・ジェスのモノクロ写真と、フランス人作家アンドレ・モーロワによる、パリの女性に関するエッセイが半々で構成される。では「パリジェンヌ」と「パリの女」の違いはなんだろう?
モーロアはこう書いている。
「パリジェンヌはひとつの概念であり、パリの女の存在はピトレスク(絵画的)で個人的だ」。
作家たちがつくりだしたパリジェンヌの幻想から解き放たれた1950年当時のパリの女性は、個性あふれ、教養があって、向学心に燃えている。ページにはさまざまな職業の女性たちが登場する。作家、女優、実業家、モデル、ダンサー。それだけじゃない。郵便配達人、宝くじ売り、セーヌ河畔の古本屋、市場の野菜売りに、路上の風船売り、工場労働者、絶滅間近の電話交換手。
当時、パリには120万人の男性に対して150万人の女性がいたという。もともとの男性の種の弱さに加えて、戦争による出兵による減少もあった。多くは地方からやってきた女性たちは、いままで男性がおこなってきた仕事にも果敢にその活動を拡げていった。美人が多いわけでもないし、野暮ったいファッションだったりもする。しかし自分の仕事に打ちこむ女性たちは誰もがとても魅力的に見える。そして最後に登場するのは、そう、パリの恋人たち。パリの女は恋をするのも大切な仕事だ、今も昔も。モーロアはこうも書いている。
「パリは女の都である。なぜなら、女のための男がいるから」。
数年前からパリの女性の出生率の向上が話題となった。もちろん政策的な優遇処置や、社会のシステムも原因のひとつだろう。でもこの写真集を見れば、パリという都市が世界にも稀な、女性がプライドをもって生きることのできる場所だったことがなによりもの原因だということが理解できるはずだ。
【PAPERSKY BOOK CLUB 8月-9月の本】
パリの女
アンドレ・モーロア 著/ニコ・ジェス 写真/朝吹登水子 訳
紀伊国屋書店 ¥2,940
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