北海道の旭川で7月8日から10日の3日間、木の「ものづくり」にかかわる人が集まるコミュニティキャンプが行われた。これは、木工産業が盛んな旭川で、職人、デザイナー、ショップなどが集結して、これからの時代の、新しい動きを生み出す場をつくろうとの思いから始まったもの。「旭川木工コミュニティキャンプ(AMCC)」として2009年から行われている。今年は、地元から約100名、東京など他の都市から約50名が参加した。参加者は、木工製作の現場や、森を見学し、デザインとものづくりについてトークセッションを行ったり、現地の人と交流を深める。
「旭川の木工を知ってもらうためには、現地に来てもらうのが一番だと思った。」と語るのは、旭川市工芸センターの後藤哲憲さん。ここで出会った職人とデザイナーが一緒に新たな商品をつくったり、この場を訪れた人から話が広がり注文につながったり、といった目に見える成果も生まれた。木工職人と、都心から集まるデザイナーやバイヤーとの交流の場になっている。
もともと旭川の木工業界が特異なのは、デザインをする人、つくる人、売る人、の関係がとても密接で、その境界線が場合によって臨機応変に変化し、とても風通しがよいこと。 「昔からの伝統工芸のようなしがらみがなく、まっさらの状態だったから、新しいものづくりがしやすかったのかもしれません。」旭川の木工品を取り扱う店、クラフト・ブラウンボックスの得永光利さんは言う。職人、デザイナーの得意不得意を知った上で、商品によって発注の仕方も工夫をするそう。それができるのも、この旭川に、さまざまなタイプの職人が集結しているからだろう。ひとりでデザイン、設計、製作までをこなす人、デザイナーとタッグを組んでものづくりに専念する人、より企画モノやアイディア商品に力を注ぐ人。など、携わり方はそれぞれだが、古い産業をもつ土地でよく耳にする「職人とデザイナーは違います」「職人のつくるものは芸術品ではない」といった言葉がナンセンスに聞こえるほど、旭川ではデザイン、アート、職人の域がつながっている。もちろん、それぞれ主とする役割があるのだけれど、その幅の広さや、垣根を越えることを許容する雰囲気や度量がある。
キャンプの一つの目玉である「もくじ展」では、そんな風潮を表すように、多岐にわたる参加者の作品を見ることができる。北欧の家具に並ぶほどのデザインと質の高さ。美しい形や斬新なアイディアなど、バリエーションの豊富なことに驚く。旭川の木工が、過去の産物であるお土産品としてではなく、今も最前線で人々の生活に必要なものを提供し続けている表れだろう。
もう一つ、このキャンプの目玉は、木工の原材料となる木を生み出す「森」を知るワークショップに参加できること。NPO法人「もりねっと」の陣内さんの案内で、森に入り、どんな風に木が育ち、人の手を介して森がどう豊かになっていくかのお話を聞く。その上で、ある一本の木をより強くするために、周囲のどの木を間伐すればよいかを参加者全員で考え、最後は実際に目の前で木を間伐するのを見る。直径約30cmの木が目の前で音をたてて倒れていく様は、その木が刻んできた年月と、自分たちがこの森に与える影響の大きさを感じて殊勝な気持になる。気の遠くなるような年月をかけて、新たな森づくりをしていこうという姿勢に、木工の町の一面が見える。
日本人は、古くから木の製品に囲まれて暮らしてきた。そのせいか、木に触れると、ぬくもりやあたたかみを感じ、ほっとした気持になる。木は、削られて製品に形を変えたあとも、ずっとその命、言い換えるなら魂のようなものを秘めているのだと思う。木の魂が醸し出すぬくもりや美しさを大切に活かしながら、家具や食器をつくる職人が集う木工の町、旭川。来年の夏も、ぜひ訪れてみたい場所だ。
» AMCC
http://www.mokkocamp.org/index.php
» もりねっとhokkaido
http://www.morinet-h.org/index.html