「日本にある、見過ごされているよいものを再発見しよう」というペーパースカイジャパンクラブ。その第一回目のクラブ活動が5/23(日)に行われた。キャプテンであるCLASKA/DO の大熊健郎さんがその舞台に選んだのは、東京駒場にある日本民藝館。「民藝」とは民衆的工芸品、すなわち一般の人々が使っていた日常の道具に美しさを見出すという意味があり、その民藝運動の創始者である柳宗悦らの企画により昭和11年に開館したものだ。当時美や評価の対象外とされていた、名もなき工人が作った器や道具の中に美的価値を見出そうという思いのもと、柳らが当時日本全国や朝鮮など訪ね歩いて収集した織物や古陶磁などが数多く展示されている。
館内を見学する前に、大熊さんが今回のクラブ活動のテーマについて説明してくれた。
「ここ民藝館には、70年前、柳らがその価値や美しさを”再発見”し、選ばれたものが集められています。それは、その時代の中で、言ってみれば柳の価値観やライフスタイルの中で美しいと捉えられたものだと言えるかもしれません。それはそれとして、今私たちが生きている時代の中で見たらどうだろうか、私たちのライフスタイルに合うかどうか、本当に自分にとっても美しいものなのか、民藝館で見たら素晴らしいけれど、自分の家にあったらどうだろう、というように、考えながら見ていただきたいと思います。美しいと言われているものをそのまま受け入れるのではなく、批判的に見るのも大事なことです。自分なりの価値を発見すること、それが、当時の柳らの姿勢に通じるものだと思います」。
展示されているものを美の原点として回帰することではなく、大切なのは「今の暮らしを視点に」見つめ直すという作業。それは、伝統工芸品と呼ばれるものも今の時代に合ったように進化していくことが大事、という大熊さんがクラフトを捉える視点にも通じる。
館内は日本民藝協会の村上さんが一緒に案内して下さった。染色の部屋、古陶磁の部屋、そして開催中の朝鮮陶磁展など、幅広いコレクションが並んでいる。こうしたものは、今でこそ価値のあるものとして認められていても、柳らが収集した当時は二束三文の価値しかないものとして扱われていたという。いずれも華美な装飾を施されたものはほとんどなく、機能性の中にシンプルな美を感じさせる道具ばかりだ。
もう一つ見学のポイントとして大熊さんが挙げていたのが「コーディネイトの力」 – ものそのものの美しさだけではなく、その周辺に並んだものとの組み合わせ、空間の中での関係性により一層美しさが引き立つということだった。この民藝館には、柳らが細部にまでこだわって設えた棚や展示ケース、建具などが設立当時から受け継がれており、角を加工された障子の桟や展示ケースひとつとってみても、その美へのこだわりはさすが。そうした空間の中で、ひとつひとつの展示物が一番美しく輝くような陳列がなされ、周辺のものと形や色で引き立ち合うように隅々まで配慮されている。
展示室に配された椅子やテーブルも当時からあるもの。松本市の松本民藝家具によって制作されている籐のベンチシートは、編集長ルーカスも興味津々。座り心地を試してみたり、リクライニングだから部屋に置いてお茶を飲みたいねなどと、参加してくれたKaoさん(自転車クラブキャプテン)と一緒に盛り上がっていた。柳らが集めたものを鑑賞しながら、自分たちのライフスタイルに合わせて考えてみたりすることで、展示されているものがぐっと身近に思えてきた。
「白磁高足杯」という、19世紀に朝鮮で使われていた盃。これも実際に晩酌に使うとしたら…という視点で見ると、芸術作品としてみるのとは違い、こうだったらいいのに、もう少し小さければかわいいのに…などという気持ちも生まれてくる。美しいかどうか、気に入って使うかどうかは自分のセンス次第ということに改めて気づく。ルーカスが「作ってみたらいいんじゃない?」と言っていたように、自分で何かものを作るときの参考としても役立ちそうだ。何百年も人が大事にとっておいたものには、やはりそれなりのクリエイティブを感じさせてくれる。
作家の名前やブランドなどにとらわれることなく、 自分たち自身の目で、ものそのものの美しさを見出し、価値を与えること – それがジャパンクラブが考える今の時代に合った日本のクラフトの再発見。同じような気持ちで、大正時代にそうした運動をした人々がいた – そうした思想を伝える民藝館でのイベントは、第一回目にふさわしいクラブ活動となった。