Darryl Wee

CHINESE? 和風チャイニーズ

お寺で見かける魔除けのような石彫の獅子が、引き戸の玄関を見守っている。こぢんまりとしたお店が多い中央線沿線の阿佐ヶ谷に、僕がこの半年ほどよく通っているレストラン「オトノハ」がある。調理方法は中華だが、食材は国産にこだわり、旬の野菜や紋甲イカ、大山鶏などを使用している中華レストランだ。
僕の生まれ育ったシンガポールには高級な中華料理店が多いのだが、ここ数年、日本でも中華料理をベースとし、国産の食材を使ったお店が急増している。黒豚入りのチャーシュー饅頭や国産しめじが入ったシンプルな野菜炒めなど、よく見かけるようになってきた。国産は品質がいいというイメージに乗じてさまざまな店があるのだろうけど、国産の材料にこだわるお店とは明らかにスタンスが違う。当日いただいたエビチリ(日本の中華料理の定番のひとつなのに、シンガポールにはめったにないメニューだ)に旬の空豆が入っていて、かじった瞬間に「味つけは中華としか言いようがないけど、食材はあまり中華っぽくない。まるで初めて食べるような味だ…」と実感した。お料理だけではなく、使い古した家具や食器棚を設置したインテリア、そして沖縄の素朴なお皿なども印象的。

十把一絡げにするつもりはけっしてないのだが、中華料理屋というと、密集したスタッフのいるかなり豪華な店内を思い浮かべるシンガポール。そんなシンガポールでは「オトノハ」のようなこぢんまりとした雰囲気のお店は流行らないだろう。なぜならシンガポールで中華料理屋に行くといえば、家族や友人など、大人数で宴会のような雰囲気を楽しむことを意味するからだ。そんなシンガポールの店とは対照的だが、最近、日本に増えつつある、どこか落ち着く中華レストラン。メニューの種類はそれほど多くはないけれど、そこには個人経営の小さなお店でしか醸しだせない、不思議な魅力があると僕は思う。

【Food Club Captain】 ダリル・ウィー Darryl Wee
シンガポール出身のライター・翻訳者。日本の現代美術、建築、食文化について執筆している。

オトノハ 東京都杉並区阿佐ヶ谷南1-14-12

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