Bicycle Traveler: 自転車と走るりんごの里山
列車に自転車をかつぎこむ「輪行」という旅のかたちは、駅にたどり着いたその後で、特に醍醐味を感じることができる。持ち運ぶため、コンパクトにまとめた愛車を専用の袋から解き放ち、降り立った駅からさっそく自分のペースで走り出す。学生時代、自転車部に所属していた本誌編集長ルーカスが、しばらくぶりに自転車で走りたい土地として選んだのは、岩木山を望む津軽平野だった。はじめましての町にある、いつもの愛車。その土地と、そこに訪れる者の気持ちの距離は、確実に近くなる。例えば1日数本しかないバスの時刻表も、なかなかつかまらないタクシーも、気に留める必要がないからだ。
翌朝からのサイクリングは、岩木山北側、山の中腹にあるナクア白神ホテル&リゾートを起点に、山のまわりをぐるり一周する。練習中の地元競輪選手たちと会釈を交わし、紅や青のりんごがたわわに実る初秋の果樹園へ寄り道。嶽温泉を目指す。1日目:岩手山外周(一部除く)/約50km、 6時間弱。
翌日は鰺ヶ沢駅を起点に、津軽半島の北西部にある十三湖と、特産のシジミ。それに、鯵ヶ沢近郊の日本海で採れるイカを目当てに走る。スイカ畑で出会ったキヨさんという女性は、もう出荷できないから、とそばにあったスイカを割り、自転車と共に訪れた私たち一行をねぎらってくれた。喉の乾きを潤す甘い味とキヨさんの笑顔は、旅の記憶とともに、しっかりと心に刻まれている。きっと車なら、ただの通過点だろう。でも、自転車だから、立ち止まっての心の交流ができる。その喜びをかみしめずしては語れない旅だった。2日目:日本海沿い、十三湖をめぐる/約75km, 6時間前後。
輪行の旅の醍醐味は、道中の四季折々の景観を、その土地の空気を肌で感じながら走破することと、たどり着いた先で地のものをおいしくいただくことだろう。それに、地元の人とのあったかいふれあいは、やっぱり欠かせない。次は、残雪の岩木山を背景に咲く、真っ白なりんごに花を愛でに、訪れてみたい。
This excerpt originally appeared in Papersky No. 27 (Bicycle traveler).








































