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富良野の雪原を犬ぞりで走る:アウトライダー松原秀尚

あたり一面、雪に包まれた静寂の世界を、スキーでもスノーボードでもなく、犬たちと一緒に進んでいく。厳寒の地で数千年前に生まれたといわれる、人々が生きるための知恵、犬ぞり。北海道・富良野で犬ぞりツアーを行っている松原秀尚さん […]

04/23/2010

あたり一面、雪に包まれた静寂の世界を、スキーでもスノーボードでもなく、犬たちと一緒に進んでいく。厳寒の地で数千年前に生まれたといわれる、人々が生きるための知恵、犬ぞり。北海道・富良野で犬ぞりツアーを行っている松原秀尚さんに案内してもらった。松原さんは、都市生活から一線を画し、自然あふれるこの地に住んで20年以上になる犬ぞりマッシャー(操縦者)。毎年12月から3月いっぱい、犬ぞりツアーをおこなっている。でもそれは4ヵ月限定の姿。1年のうちの残りの8ヵ月は、伝統工法によってカヤックやそりなどの制作に打ち込む職人になる。アリューシャン列島に伝わるカヤック・バイダルカの伝統工法による制作ができる人物は、世界でもいまや数少ない。
「ハイク!」のかけ声とともに、犬たちが一斉に走り出す。マッシャーのコマンドが森中に響き渡り、ほかの音といえば、犬たちの呼吸とそりが引かれていく音だけ。静寂のなか、自然の懐へと犬たちとともに向かっていく。人間はあくまでそりに載せた積荷を犬たちと一緒に運ぶという立ち位置。人の体重はそりの積荷にカウントしない。だから上り坂では、そりを降りて犬たちに声をかけながら、一緒に上る。また途中途中でそりを止めては、犬たちを褒める。これがとても重要なのだそう。けっしてスノーモービル感覚の乗り物と思ってはいけないというわけだ。
4時間ほど走った休憩地点には、松原さんの建てたゲルと、お手製の温かいシチューが待っていた。「私は、過酷な環境でこそ、人間の知恵は活かされていると思うんです。犬ぞりもカヤックも、このゲルも、寒さ厳しい環境で生活する人間の知恵がつまっている。だからそれに触れたいと思うし、後世に残し伝えていきたいと思うんです」
物質文明のもと、大量消費大量生産で多くのものを生み出しては捨ててきた私たち。捨てたもののなかには、何百年、何千年という時をかけてつくりあげてきた人類の知恵も含まれている。松原さんはそれにいちはやく気づき、捨てられつつあるその知恵を拾い集め、行動を起こしている。