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火と遊ぶ壮大な夜 飯山道祖神祭り

長野県飯山市、冬にはどっしりと雪に覆われるこの地域では、年に一度、小正月の頃に「道祖神祭り」が行われる。全国各地で行われる「賽の神」や「どんと焼き」といった、カヤに火を放ち正月飾りを燃やす行事によく似ているが、その迫力と […]

01/25/2010

長野県飯山市、冬にはどっしりと雪に覆われるこの地域では、年に一度、小正月の頃に「道祖神祭り」が行われる。全国各地で行われる「賽の神」や「どんと焼き」といった、カヤに火を放ち正月飾りを燃やす行事によく似ているが、その迫力と激しさでは群を抜いているだろう。祭りの日、その行事の中心となる家を訪ねると、長さ8メートルほどの書き初めが20枚、家の軒先に大々的に吊り下げられていた。長男が生まれた家を祝って近所や親戚の人たちが書いたもので、その名前や故事がしたためられている。その夜、家には近所の人や親戚が集まった。ひとしきり祝宴をあげた後、みな長靴とジャンパーを着込んで外へ出る。書き初めを吊るした竹竿を男衆が担ぎ、ワッショイのかけ声とともに町内を練り歩く。やがて行列は千曲川の河川敷へと到着する。雪原となった河川敷に踏み固められた一本の道。その先に見えるのは、明々と燃えさかるカヤの塔だ。先に始まっていた隣町の道祖神であったが、雪を照らすその炎は、取り囲む人々の表情を神妙に浮かび上がらせていた。
書き初めを高く掲げ、準備が整った頃、それまで雪の中で遊んでいた子どもたちが集められた。この祭りの主役は子どもたちだ。小中学生の子どもたち30人ほどが2組に別れ、それぞれ大小2つある道祖神の前に立つ。小さい方の道祖神を”ババ”、大きい方を”ジジ”と呼び、まずはババに火が付けられる。炎の松明を手に取り、ジジに向かって走るババ側の子どもたち。それをジジ側の子どもたちは、手に持った枝で叩き落して火を消していく。子どもたちが手にする松明の炎の勢いは、見ている大人がひるむほどだ。攻防戦をくぐり抜け、とうとうジジに火が付けられた。天高くのぼる炎に、竹竿を揺らしながら書き初めを燃やしていき、燃え尽きたところで暖かな拍手がわき、祭りは終盤を迎える。
普段触れることのない炎を自ら手にし、走り回る子どもたち。年に一度、子どもたちは思いきり火と戯れ、その脅威を身体に記憶する。それは火に対する畏敬の念を呼び起こすだけでなく、心跳る”遊び”としても子どもたちの心に刻まれることだろう。