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遊び心を伝えるメディア 今宵堂の酒器

「日本のように、食卓にいろんな種類の器が並ぶのは、世界的に見ても珍しいんです。陶器、磁器、うるし、ガラスだったりと、イギリスなら同じ磁器で柄も同じだし、韓国なら銀で統一されていたりしますよね。だから、やきものも、ひとつの […]

01/22/2010

「日本のように、食卓にいろんな種類の器が並ぶのは、世界的に見ても珍しいんです。陶器、磁器、うるし、ガラスだったりと、イギリスなら同じ磁器で柄も同じだし、韓国なら銀で統一されていたりしますよね。だから、やきものも、ひとつの形にこだわらず、いろんなものを作るようにしています」- そう話すのは、京都鴨川のほとりに工房を構え、遊び心あふれる暮らしの器を作っている、今宵堂の上原連さん・梨恵さんご夫婦。ギャラリーと工房、そして居住スペースが一緒になった町屋には、中庭からやわらかな光が差し込む。焼き窯やろくろ、土や釉薬といった陶芸材料は、機能的に配置・収納され、室内は整然としていて心を落ち着かせてくれる。「京都の町屋は基本的に狭いですから、道具の片付け方は徹底して教わりました。それに、二人とも持ち物が少ないんです」と話す連さんは、ゲーム制作会社に務めた後、京都の職業訓練校で陶工の技術を学び、同じく学んでいたパートナーの梨恵さんと出会った。二人の作る器は、「○○ 焼」という特定のスタイルを持たず、使う土や釉薬もいろいろで、作りたいテーマに合わせてアイデアを練る。
昨年12月に京都で開かれた「晩酌のすすめ展」では、端正な色使いやデザインながらも、遊び心あふれる徳利や盃が並んだ。やきものの世界で受け継がれてきた技法を駆使しながらも、自分たちのアイデアによって新しい形を作り出す。一つ一つの器に込められたユーモアや工夫は、彼らならではのストーリーとして、そのやきものを楽しく演出する。「焼きものでゲームを作ってもいいんだ、と気がついたんです」と説明してくれたのは、酒を呑む盃を駒に見立て、実際に杯を交わしながら遊ぶことができるという「盃将棋」。制作はもちろん、駒の種類から遊び方まで自分たちで考えた。
各地で行われる展示会には、テーマに合わせたやきものを、二人でアイデアを出しあって作る。例えば、静岡での展示会には、羽衣伝説になぞらえて白い器を制作。書画にちなんだ展示会では、半紙のように薄い「陶紙」を作った。マリー・アントワネットや、新選組の隊士など、歴史上の人物が使っていたと仮定して作る架空の器もある。陶芸という技術を使って、自分たちの表現したいことを形にする。「やきものを好きな人だけでなく、普通の人がいいと思う器を作って、やきものの楽しさを伝えたい」という言葉通り、彼らにとってやきものは、手にする人を楽しませる小さなエンターテインメントの場なのである。
酒器 今宵堂 »http://www.koyoido.com/