Photo: Yohei Naruse

山と水の画家 吉田博

描きたい自然を求めてなりふり構わず山々を渡り歩き、卓越した技術と山の霊性とでもいうべき高山の美を絵画や版画に表現してみせた吉田博。現在『PAPER SKY』で連載している「Nihon Alps 12 views」は、そんな吉田博の山旅を辿るものですが、吉田博に関する新しい書籍『山と水の画家 吉田博』(安永幸一著 弦書房)がこの秋出版されました。著者の安永さんは長年吉田博の研究をされている方で、「はじめに」の中で次のように語っています。

「吉田博作品の魅力を一言で語るとすれば、それは自然に対する独自の姿勢と真摯な取り組みにある、と私は思う。自然の中に溶け込み、自然と一体となり、「仙骨」を自負して自然の中に自らを没することで初めて人を感動させ得る風景が描けるのだとする、生涯を貫いた信念である。」

内容は吉田博の生い立ちから芸術活動、海外周遊の旅、そして山に対する姿勢など。カラー絵53点(油彩、水彩、版画)のほか、モノクロ絵、吉田博の写真や資料なども載っており、吉田博を知るための最初の一冊におすすめの本です。一昨年、やはり安永さんによって編集された671ページに及ぶ『吉田博資料集 明治洋画新資料』(福岡市文化芸術振興財団)を読みやすくした内容です。

吉田博はアメリカをはじめとした海外で作品を売っては旅の資金をつくり、次なる旅をしながら作品を描いていました。そのために作品が世界中に散らばっており、なかなかまとまった研究がされてこなかった人物。安永さんの著書は吉田博を知る上でとても貴重です。その他、手に入りやすいものとして『吉田博全木版画集』(阿部出版)があります。

山を愛した孤高の画家がどのように山と向かい合っていたのか。この本は、きっとあなたの山歩きをひと味違ったものにしてくれるはずです。

『山と水の画家 吉田博』安永幸一著 弦書房

成瀬洋平 / Mountain Club Captain
1982年、岐阜県生まれ。山を歩き、旅をする中で見聞きしたことを絵や文章で表現している。

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