山を包みこむ光、山に立ちこめる霧、そして山で暮らす生きものや山がつくりだす造形。山を歩き、山で出会うさまざまなものを、独特の空気感が漂う写真で表現している写真家の野川かさねさん。彼女は山でなにを見て、なにを感じて、その世界を表現しているのだろう。「囲碁の盤が宇宙を表しているって知っていますか? 真ん中にある天元という星が宇宙の中心で、四隅から四つの星に囲まれている。それを知ってから、格子状のものを見ると宇宙を感じるんです。たとえばスノーシューイングのときに見た氷の表面の亀裂とか…。日常でも格子を見て宇宙を想像することはあるけど、山にいると感覚が鋭くなって、いろんなことに気がついたり、想像したり、感じたりするんです。山そのものを美しいと思うこともあるし、そういう小さなものを見て大きなものを想像することもあります。山でもほかの被写体でも、基本的に表現したいものは変わらないのだけど、山だとそれがすごくよく表現できるんですね。山に行って、はじめてそのことに気がつきました。自分の表現したいものが『あ、ここにあった』っていう感覚。最近、撮っているのは“山”そのものよりも“山のなかのものたち”の写真なのかなと思っています」
“山のなかのものたち”と出会うことによって彼女の想像はふくらみ、詩的な写真へと表現されてゆく。そんな野川さんがこれからの季節におすすめしてくれたのが、スノーシューイング。「道なき道を行けること、スキーのように練習がいらないことがスノーシューの魅力。雪の上を歩くと、子どもみたいに無性に走りたくなったりします。信越トレイルや北八ヶ岳の高見石小屋ならスノーシューをレンタルできるツアーもあるから、ひとりでは無理という人にもおすすめです」
[book data] 「山」と山で出会った「 鹿」 がテーマの写真集 『山と鹿』は、UTRECHT(www.utrecht.jp)、 野川さんの好きなガストン・レビュファなどの言葉を添えた写真集『ポケットに山を01』は、pokeyama@gmail.comから購入できる。
成瀬洋平 / Mountain Club Captain
1982年、岐阜県生まれ。山を歩き、旅をする中で見聞きしたことを絵や文章で表現している。