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ケンジントンの王 | トロントで「世界」を味わう(No.10)

, 2004/07/25

トロン卜のケンジントン街の活気に満ちた通りを車で、走っていると、僕たちの目はベルヴュー・パークの片隅に立つひとつの彫像を捉えた。「実はあれ、僕の父さんなんだ」 同行していたガイドの青年がそう呟く。好奇心をそそられて、もっと近くに寄ってみる。人々を歓迎するように腕を大きく拡げたフレンドリーな男の像が、一組の木製のベンチの前に立っている。襟元には、ファンから贈られた一輪のバラがさしてある。

『キング・オブ・ケンジントン』という番組がトロントのテレビで初めて放映されたのは1975年。アル・ワックスマンという男が扮する、愛すべきバラエティーショップのオーナーが主人公の連続ホームコメティーだった。このショーには、さまざまな民族的背景を持つキングの友人たちが登場する。ジャマイカ出身の郵便配達人ネスターや、「ミラノの公爵」トニー・ザ口といった面々がキングとつるみ、マミーのコーシャ一肉店(ユダヤ教の戒律に従った肉屋)とダ・シルヴァのポルトガル魚市場に挟まれたスペースに、ポーカーゲームをしに集まってくる。5年間続いたこの番組は、その間に多くのファンを獲得し、カナダでも最も成功を収めたテレピ・コメディーの座を勝ち取った。

ワックスマンはカナダ圏内の伝説ともなっている人物で、1997年にはこの国で最も栄誉ある民間人に贈られる「カナダ勲章」が授与された。彼の息子であるガイドと一緒にトロン卜のギリシャ人街やリトル・ポーランド、チャイナタウンを通ると、出会う人々は皆、心からの追憶の情でもって、ワックスマンと彼のコメディショーに思いを馳せる。

トロン卜っ子は『キング・オブ・ケンジントン』で讃えられていたマルチ・カルチュラリズム(多文化主義)を誇りにしている。それはこの街の文化的風景の一部ともなっていて、僕たちが行くほとんどすべての場所にはっきりと表れている。このマルチカルチュラリズムは、表面的にはそれほど賞賛すべきものには見えないかもしれない。今この時代、世界の主要都市の中心地は、あまりにもたくさんの種類の民族や文化の住処となっている。でもトロン卜では、「人種のるつぼ」というレッテルは嘲笑的ではない新しい意味合いが込められてきたのだ。この街の49%を構成するのは第一世代の移民たちで、人口の20% 以上が過去15年間にトロントに移住してきたという。しかも驚くべきことに、これほど雑多な文化が混ざり合っているにもかかわらず、ヨーロッパやアメリカの主要国際都市の中心地によく見られるような緊張関係は、ここにはほとんど存在しないのだ。どの集団にしてみても、この街の多種多様な住民たちは、平和に暮らすための方法をちゃんと心得ている。争いの絶えないこの世界の政治的・文化的分裂は、一見、終わりのないパレードのようにも見えるが、そんな時代の只中でトロントは暗聞に灯る「かがり火」なのだ。

ケンジントン地区は、トロントの進歩的な共同社会精神を最も象徴する街と言えるだろう。ユダヤ系のデリの隣に中近東系の食料品店があり、そのまた隣には日本人の経営する古着屋が建ち並ぶ。そんな光景が街の隅々まで、チャイナタウンの端の端までずっと続いている。そして、その中心に立って合図を送っているのが、襟元にパラの花をつけたアル・ワックスマンの銅像。まさに「キング・オフ・ケンジントン」だ。

Text: ピーター・ウィルソン
PAPERSKY No.10 Toronto International トロントで「世界」を味わう
July 2004

The King of Kensington | TORONTO | EDITOR’S NOTE -10

On a drive through the vibrant streets of Toronto’s Kensington neighborhood we notice a statue set on the edge of Bellevue Park. “My father, actually . 一” mutters our guide. We ask for a closer look. The figure of a friendly man with large, welcoming arms outstretched stands in front of a pair of wooden benches. A devotee has attached a rose to his lapel.

The King of Kensington first aired in Toronto in 1975. It was a situation comedy centered on a lovable variety store owner played by AI Waxman. In the show, King’s friends are a multi-ethnic bunch. Nestor, the Jamaican postman , Tony “the Duke of Milan” Zarro, and others hang with the King and meet for regular poker games in the basement between Manny’s Strictly Kosher Butcher and Da Silva’s Portuguese Fish Market. During its five year run, the show won a massive following and became Canada’s most successful television comedy.

Waxman is a legend, and in1997 he was awarded The Order of Canada, the country’s highest civilian honor. As we work our way through Toronto’s Greek town , Little Poland , and Chinatown the people we encounter recall the man and his show with obvious enthusiasm.

Torontonians are proud of the multiculturalism celebrated in The King of Kensington. The “ melting pot” label takes on provocative new meaning here. With 49% of the residents comprised of first generation immigrants, and more than 20% of the population new to Toronto in the last 15 years, tensions that are so common in Europe and the United States are all but nonexistent. For the most part, the residents of this city have found a way to live together. In the midst of the world’s fractious political and cultural divisions, Toronto is a beacon in the night.

The neighborhood of Kensington is perhaps the most emblematic of the city’s cultural pastiche. Jewish delis sit next to Middle Eastern grocery stores, next to Japanese used clothiers, on and on , down the block, around the corner, and up to the edge of Chinatown. And at the center of it, with a rose in his lapel, stands a beckoning bronze AI Waxman.T he King of Kensington.

Text: Peter Wilson
PAPERSKY No.10 Toronto International – A Taste of the World
July 2004

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